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シード圏外からの大逆転 箱根駅伝王者・駒澤大が「ベストメンバーではない&3位以内狙い」なのに優勝できた理由
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2021/11/08 17:04
一時はシード圏外にも落ちた駒大だったが、エース田澤の快走など後半に怒涛の追い上げを見せて全日本大学駅伝2連覇を達成した
佐藤にとってはデビュー戦だが、悔しさを晴らす場でもあった。
出雲駅伝の出走のチャンスを得るべく全日本インカレの5000mに出走したが暑さに負けて15分台を出し、「今までの中で最悪のレースをしてしまいました」と、青ざめた表情で語った。同期の篠原は2位に入り、出雲の出走を勝ち取り、1区でデビューを果たした。先を越された悔しさを抱えながら治療やケアに時間を割き、ジョグの後に流しを入れるなどして体のキレを戻していった。10月3日の日体大記録会5000mで13分40秒99の自己ベストを出して復調をアピール。そうして今回の1区に指名され、駅伝デビューを飾った。
「監督には『目立つな』と言われました。存在感を消して余計な力を使わないように粘って、目立つのは最後だけでいいと。ラストスパートは監督の指示もありましたし、昨年の大会で三浦(龍司・順大2年)さんがスパートしたところでもあったので、吉居(大和・中央大2年)さんと島崎(慎愛・国学大4年)さんの顔を見て、ここだなと前に出ました」
箱根駅伝でも1区を走れるようにしたいと語るルーキーだが、篠原はいいライバルであり、心強い同期でもある。今回、区間新を出した後にその篠原からLINEが届いたという。
「すげぇな」
佐藤は、その一言が嬉しかった。
4区赤星)最強の代でも「自分は下のレベルなので……」
4区の赤星雄斗(2年)は、冷静だった。
11位で襷を受け、少し前には中央大、東洋大がいた。3キロで中央に追いつき、相手をうまく利用して休み、落ちついてから自分のペースで前を追った。
「他大学の選手を見ると名前のある選手が多くて不安もありました。自分はきつくなると気持ちが切れてネガティブになるんです。でも、今回はそこを粘って、自分に勝つという強い気持ちとチームのために1秒でも前へという意識で走りました」
赤星は駒澤・最強の2年生と言われている選手のひとりだが、非常に謙虚だ。
「2年生は芽吹と唐澤が中心で強いと言われていますけど、自分は下のレベルなので、そういうことは気にしていません。自分のできることを精一杯やって、少しでも早く上の仲間に追いついて、追い越していきたいと思っています」