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「スケボー禁止!」「スケボー禁止!」14歳と19歳のスケボー女王を取材して痛感した《日本ではスケボーをやる場所がない》問題
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2021/10/25 17:03
今回取材した西矢椛14歳。松原中在学中。日本人女性として初の21世紀生まれの五輪金メダリストに。取材は大阪府松原市にあるスポーツパークまつばらで行った
パークの入場料は1日利用で大人510円、子供(中学生以下)は310円。決して高くはないけれど、もし自分がスケボー大好きな中学1年生だったら、この料金でもやっぱりちょっと辛いかもしれない。1カ月毎日通ったら9000円、今時のお小遣いが月平均いくらなのかは知らないけれど、けっこう痛い出費である。
じゃあパークの外、どこか違う場所で楽しくタダでスケートできるかというと、公園内には至るところ、これでもか、というくらい「スケボー禁止!」の貼り紙が、何かスケボーに個人的な恨みでもあるのだろうか、と思うくらいに貼られてある。
「大阪って人口は880万人もいてるのに、公営のパークって数えるほどしかないんですよ。大きなところはここか、熊取か大東、その3つくらいですし、大阪市内に至ってはゼロです。スケーター人口は大阪だけでも8万から9万人、そう考えたら公営パークはもっと増やさなあかんやろ、って僕は思うんですけどね」
そう教えてくれたのは原池のパーク管理を市から委託されている株式会社PSJの営業部長、中嶋寛寿さんだ。
63歳の中嶋さんはもう随分と昔からスケートボード関係の輸入や販売に関わってきた。スケーターの人口は毎年右肩上がりで増え続けているが、日本国内のスケートパークは大小合わせてもおよそ300くらいしかない。ちなみに、本場アメリカは3500くらいあるという。
「スケボーって迷惑やなあ」から「早くパーク作ったって」
やっぱり、スケボーに対する社会とか行政の理解、未だ全然足りない感じなんですか?
「スケボーって、タトゥーして、ピアスして、ちょっとゴリゴリ系の人らが、一発行くわってイメージありますよね。確かにそういう子供たちもここに来ますけど、実際に話してみるととても素直だし優しいですよ。ほとんどのスケーターはルールを守るし、ストリートで滑ってる子でも一定のレベルでルールは守ってます」
だからこそ、じゃあどこで滑ればいいの? という彼らの問いに、ここで滑ったらええんやで、という答えをより多く提示してあげたいというのが中嶋さんの考えである。
「さくらちゃん、あるいはもみじちゃんが金メダル獲ったのはもちろん嬉しかったです。年甲斐もなく、手に汗握って応援してましたから(笑)。だけど、今回のオリンピックで何よりも良かったのは、大技にトライして失敗した競技者を、他の競技者同士で称え合うという光景をみんなが見てくれたことでした」
あの心温まる光景を見て、スケボーって迷惑やなあ、カンカンうるさいなあ、って思っていた人たちの口から、早く彼らのためにパーク作ったってください、というセリフが聞こえてくるようになったそうだ。
「日本人は細かい部分を徹底的に詰めますから」
中嶋さんに話を聞いた後は、その日たまたま原池に居合わせたプロスケートボーダーの山崎勇亀さんにも話を聞けた。