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“笑わない男”モウリーニョが人前でにこやかにピッツァを…世界を敵に回した“スペシャルワン”にローマで何が起きたのか 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/10/16 17:00

“笑わない男”モウリーニョが人前でにこやかにピッツァを…世界を敵に回した“スペシャルワン”にローマで何が起きたのか<Number Web> photograph by Getty Images

ローマ指揮官就任後は会見でも柔和な笑顔を見せることが多くなった

毒舌家・モウリーニョの本質は変わらず?

 モウリーニョといえば、かつては仕立ての良いスーツと革靴、灰色のコートがトレードマークだった。

 少し曲がった背筋にポロシャツとスニーカーを愛用する今のモウリーニョは、4節ベローナ戦に敗れると「言い訳はしない。今日はうちの負けだ」とあっさり完敗を認めて、こちらが驚かされた。

 モウリーニョは好々爺になりつつあるのか。

 否、断じて否だ。彼の毒舌は少しも錆びついていない。

 9月下旬の6節ローマ・ダービーに2-3で敗れたモウリーニョは、3度ブチ切れた。

 まずは「レフェリーもVARもお粗末だ。我々のレベルにない!」とジャッジの不安定ぶりを批判すると、返す刀で「砂が舞い上がって、攻めるべきときに攻められない! オリンピコの芝はセリエA最悪だ!」とホームグラウンドの整備業者の怠慢もバッサリ。

 さらに、試合後の会見で記者相手にたっぷり愚痴ろうとしたら、リーグ規約と試合主催者であるラツィオの決定権限により会見に出席できる記者がごく少数に制限されることが判明。スペシャルワンは激怒し、対応したリーグ機構役員を震え上がらせた。

「誰だ、そんな馬鹿げたルールを決めたやつは! 私は記者たち全員と直接やり取りがしたいんだ。質疑応答は広報を通して、だと? そんなものはジャーナリズムとはいわん! こんなクソルールはお前のケツの穴にでもぶち込んでおけ!」

 インテル時代にあれだけメディア対応を嫌っていた指揮官と同一人物とは到底思えないが、ローマの同業者たちは大喜びで仕事をしているようだ。

「キャリアで最も困難なチャレンジ」だからこそ面白い

 深まる秋にローマは、今週末の8節で対ユベントス、来週末の9節には対ナポリ、そして月末の11節では対ミランと難ゲームの連戦を控える。

 永遠の都からはスクデットが絶えて久しい。

 “貴方が過去率いた真のビッグクラブと比べ、見劣りするようなローマからのオファーをなぜ受けたのか?”

 恐る恐る尋ねた地元記者の問いに、モウリーニョはこう答えている。

「ローマの監督をやるということは、これまでの私のキャリアとは異なる挑戦だ。私が過去率いてきたクラブにはどこにも迷いや不確定なことが必ずあったものだが、このローマにはそれがない。自分たちが何者であるか、どこを目指しているか我々全員が理解している。ローマは率いるのが最も難しいチームなどではないよ。私がキャリアで最も困難なチャレンジに挑んでいることは確かだけどね」

 円熟味を増したモウリーニョは、昔よりずっとずっとサッカーを楽しんでいるように見える。

 かつて不倶戴天の敵だった男が、笑顔でいっしょに走り出した。ローマにとってこれほど頼もしい指揮官はいないだろう。

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