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〈崖っぷちの豪州戦ルポ〉森保ジャパンを救った田中碧の貪欲さと、W杯予選の重みを知る長友佑都が漏らした「安堵の言葉」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2021/10/16 11:00
試合後、どこかホッとしたような表情を浮かべる長友佑都。ベテランとしてW杯連続出場への重責を背負う
貪欲に「未来」を見据えた田中碧
最終予選初先発で初ゴールを決めた田中は、過去にないほどの大きな緊張感でこの試合を迎えていたという。
「日本サッカーの進退がかかった試合。引退してもいいと思えるくらい後悔のない試合をしたいと思った。日本サッカーの大一番、限られた選手しか立てない舞台に立つんだから。ワールドカップに出なくていいというのはない。次につなげたい」
勝利した安堵感だけでなく、先を見据えた野心が垣間見える。そんな若手ならではのハツラツとした勢いに加えて、冷静さもあった。川崎フロンターレで共闘した守田はもちろん、遠藤とは東京五輪代表でのチームメイトだ。しかし、布陣も自分自身もまだまだチームには浸透していない。そのことを理解し、リスクを冒さない注意深さを持ち合わせていた。
「もっともっとボールを持ちたいというのが本音です。でもそんなに簡単にはうまくいかない。あえてわかりやすい立ち位置をとることが大切だった。慣れてくれば、ギリギリを選択することもできる。若い選手の勢いも大切ですが、僕は勢いでのし上がってきた選手ではないから。これから成長して、代表を引っ張っていくくらいの力をつけていきたい。今日のプレーの質には満足していない。いろんな選手に迷惑をかけた。足をつりかけて、走れないので最後は1トップをやったし。もっともっとやっていかないといけない。今日の試合で手応えは感じていません。田中碧がいるメリットを存分に出していかなくちゃいけない。そして、もっとボールを握りたいし、守備をはめていきたいし、中盤を制圧したい。できると思うのでまだまだ足りない」
さまざまな反省点を口にしながらも、彼が見せた欲は、日本代表に明るさをもたらしてくれた。謙虚さや慎重さをまといながらも隠し切れない貪欲さで未来を語る田中。彼ら東京五輪世代が、2010年のワールドカップ南アフリカ大会後の北京五輪世代(本田圭佑や長友、岡崎慎司、内田篤人、香川真司)のように日本代表を担う世代へと成長していくためにも、ワールドカップには出なければならない。