ホクレン千歳大会が終わると、順大は夏合宿に入り、箱根予選会に向けて距離を踏む練習にシフトしていく。ロード（長距離）は三浦が不安視している種目だ。たしかに高校時代の成績を見ると、都大路は、1年時は4区27位、2年時は1区9位、3年時は1区21位と、高校記録を持つ3000m障害での圧倒的な強さに比べて、結果が出ていない。

「三浦は高校時代、駅伝をうまく走れなかったんですけど、大学に入ってからロード練習を見ていると、なんで上手くいかなかったのか不思議に思うくらい走れていましたし、夏合宿も先輩のうしろについていけていた。そうしたら箱根予選会であの走りですからね（笑）」

　箱根予選会、三浦はハーフを1時間1分41秒で走り、5位（日本人1位）入賞を果たす。10年ぶりに大迫傑のU20日本最高記録、U20アジア最高記録を6秒も更新し、順大の予選トップ通過に大きく貢献したのだ。続く全日本大学駅伝も1区区間賞の快走。箱根駅伝は故障の影響もあって1区10位に終わったが、長門からすると「十分すぎる1年目」だった。

2020年の箱根予選会にて。日本人トップの全体5位で順大の予選トップ通過に貢献した　©JMPA

三浦の成長を象徴する“2つのレース”

　東京五輪前、三浦の動きにキレがなくなっていた。

「大丈夫かなと、ちょっと焦りました」

　長門は不安を隠せなかったが、三浦は2つの異なるレース展開でしっかりと結果を残すなど、ここまで着実に成長し、強さを育んできた。

　5月に開催された東京五輪のテスト大会「READY STEADY TOKYO」。多くの選手が五輪出場のためタイムよりもポイントを狙いにくる（参加標準記録の突破などのほかに、世界ランキングの順位によって五輪出場権を獲得することができる）という噂を耳にした長門は、三浦と試合前にレース戦略を練った。スローな展開を予想して、2000mを5分35～40秒で通過しないようであれば自分でレースを作ること、最後はしっかり2分40秒で走り切るというプランを立てたのだ。

テスト大会「READY STEADY TOKYO」にて　©Asami Enomoto

　結果は、8分17秒46の日本新記録で優勝。三浦はきっちりと戦略通りの完璧な走りを見せ、東京五輪参加標準記録（8分20秒）も突破する。

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