その想定通り、三浦はスタートで駆け出すと、先頭集団に入って積極的なレース展開を見せる。ラスト1周でギルマとベンジャミン・キゲン（ケニア）のアフリカ勢とトップを争うと、見事に競り勝って2位に入り、8分9秒92の日本新記録で予選通過を決めた。

「タイムはもちろんですが、ラスト1周で世界のトップ選手と肩を並べて走っているシーンは興奮しました！　終わった後に『まだ余裕あったな』って話したら、『キツい』と言ってましたけど（笑）」

世界のトップ選手らと競り合う三浦　©JMPA

　ただ長門は決勝進出の嬉しさの裏で、少し気がかりなことがあった。日本記録を破って、49年ぶりの決勝進出に世間の期待値が急激な右肩上がりを見せていたのだ。SNSでは「メダルも狙える！」という声で盛り上がっていた。

「もともとそんな声を気にするタイプじゃないですけど、僕としては簡単にハードルを上げないでほしいなって思っていましたね（笑）」

ラスト1周の鐘が鳴った時点では9位

　世間の期待値が上がるなか、8月2日の決勝。スタートすると、レース展開は想定外の超スローペースで進んでいく。

「予選を踏まえて決勝はハイペースになると思っていたんですが、実際はどスロー。三浦の最初のラップ（1000m）が2分52秒でした。三浦が前に出なければ、もっと遅くなっていたと思います」

　この時、三浦は掲示板の表示を見間違え、最初の1000mを2分35秒で入ったと思っていたという。長門は「（三浦は）決勝の空気に吞まれていたのかもしれない」と振り返る。

海外仕様のスローペース展開。そんな中で、三浦は自ら前へ出ていく　©JMPA

　ラスト1周の鐘が鳴った時点では9位。そこから徐々に落ちていく選手を1人、また1人と拾い続け、200m付近でラストスパートをかけて7位でフィニッシュした。21年ぶりのトラック個人種目入賞、3000m障害種目では日本人史上初の入賞だった。

「7位という結果は、五輪前は考えられなかったですね」

「7位という結果は、五輪前は考えられなかったですね。決勝に残ればワンチャンスがあるかなって思っていましたけど……。でも予選の走りを見て『入賞できるかもしれない』と思いましたし、それを実現した三浦は本当にすごい。

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