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「速いやつは最初から速い」16歳のライダー古里太陽のグランプリ参戦を世界中が待ち望む理由とは<特技はゴルフと体操とピアノ> 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2021/09/25 11:01

「速いやつは最初から速い」16歳のライダー古里太陽のグランプリ参戦を世界中が待ち望む理由とは<特技はゴルフと体操とピアノ><Number Web> photograph by Satoshi Endo

デビューウインを果たしたルーキーズカップ・イタリア大会のレース後、笑顔を見せる古里太陽

 90年代半ばはグランプリに参戦する日本人ライダーが多かった。それはホンダも例外ではなく、加藤大治郎は順番を待たなくてはいけなかった。あれから20数年が過ぎて世界を目指す日本人ライダーは減ったが、このコロナ禍によりチャンスを失う選手たちが多い中で、太陽のようにシーズン中に一足跳びで出世していくライダーは珍しい。

 周囲の期待に応え、ルーキーズカップで衝撃のデビューウインを遂げた太陽だが、その後は初めてのコースが続いたうえ、ライバルたちに徹底的にマークされて、優勝どころか表彰台にも立てないレースが続いた。そんな太陽にシーズン終了後、「へこたれてないか?」と聞くと、彼はこう答えてくれた。

「勝つのって難しいですね。でも、いま自分の足りないところもウイークポイントもわかってきた。来年、どのカテゴリーで走るのかいまはわからないけど、勝つためにはどうすればいいのかってことがだいぶわかってきた。ルーキーズはさすがにレベルが高いと思うけど、それだけ楽しい。でも、オレ、へこたれてるように見えます? そんなヤツに見えます?」

 バイクもゴルフも体操もテニスもピアノも、すべて自分がやりたくて始めた。その中でもバイクは最高に面白かったという。体操で鍛えられたバランス感覚と身体能力の高さは、バイクのライディングにも大きな影響を与えている。

「勝負してください。絶対に勝てます」

 すでに来季に向け、元世界チャンピオンでホンダチームアジアの青山博一監督の下、トレーニングを続けている。これまで多くの若手を育ててきた青山監督も、古里太陽は興味深い選手だと語る。

「まだまだ身体が出来ていないので、GPのレギュラー組と一緒にトレーニングすると、あたりまえだがついてこられない。これからきっちり鍛えていきますが、どんなにへろへろになっていても、僕や小椋藍などチームのメンバーに『勝負してください。ハンディキャップください、絶対に勝てます』と言うのが面白い。そういうのはなかなかいないからね」

 太陽のグランプリ参戦は、いつ実現するのだろうか。すでに僕の中ではグランプリ参戦を望む選手のひとりだが、22年か23年には世界の舞台で大暴れする太陽がみられるのではないかと思っている。

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