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“10年以上”アーセナルファンの私が見た「冨安健洋22歳が30億円でも必要だったチーム事情」《(暫定)最下位というヤバい現実》 

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山中拓磨

山中拓磨Takuma Yamanaka

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posted2021/09/11 17:01

“10年以上”アーセナルファンの私が見た「冨安健洋22歳が30億円でも必要だったチーム事情」《(暫定)最下位というヤバい現実》<Number Web> photograph by Getty Images

冨安のアーセナルでの初トレーニングセッション(9月10日)。アルテタ監督と話し込む姿も見られた

 ベンゲルの後を継いだエメリにクラブを託すというプロジェクトが失敗に終わってしまったわけだが、彼の解任から次期監督の選定までに長い時間がかかっただけでなく、その間暫定で指揮を執ったフレディ・ユングベリにクラブは満足にコーチングスタッフも用意できず、チームドクターのオドリスコールとアカデミー部長のメルテザッカーが暫定的に監督をサポートしていた。これを見るに、クラブのオーナーと上層部に何かよりどころとなるような明確な方針があったようには思えない。

 また、昨年8月には当時アーセナルでサッカー長を務めていたラウール・サンジェイがクラブを去ったが、夏の移籍市場の真っ最中に選手獲得の責任者である人物がクラブを去るというのはクラブがスマートに運営されている証からは程遠いだろう。

ベテランの補強で「賭けに負け続ける」

 これと並行するような形で、ベンゲル時代終盤から、アーセナルでは将来を見据えたというよりも、当座のチームの穴を埋めるような、その場しのぎともいえる応急処置的なベテランの即戦力の補強が目立ち始めた。

 ルーカス・ペレス、ムヒタリアン、ラカゼット、ソクラティス、オーバメヤン、リヒトシュタイナー、セドリク・ソアレス、パブロ・マリ、ダビド・ルイス、ウィリアンと名前を挙げていけばきりがない。

 もちろん、即戦力の補強が悪いということではなく、チームの強化において必要なものではある。だが、選手としてのピークを迎えている年代の選手の獲得というのは活躍が見込める期間が短く、かつ高給のため放出が難しいというリスクを孕んでいる。

 獲得を一つ一つ見ていけば成功したものもあるが、総合的なクラブ戦略という意味ではアーセナルは短期的な戦力強化からのCLの舞台に返り咲きを目指す、という賭けに負け続けてしまった。

 さらにダビド・ルイスやウィリアンの獲得をはじめとする即戦力・ベテラン志向の選手補強の傾向が、(将来的なポテンシャルを見据えてのものであると思われた)監督未経験のアルテタをトップに任命した後も続いたのは非常にちぐはぐなものに感じられた。

この夏は「23歳以下を6人獲得した」

 しかし、この夏アーセナルはようやく長期的な将来も考慮したビジョンに基づいて動いているという兆しを見せ始め、選手獲得戦略に関しては劇的な方向転換を行った。

【次ページ】 この夏は「23歳以下を6人獲得した」

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