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“10年以上”アーセナルファンの私が見た「冨安健洋22歳が30億円でも必要だったチーム事情」《(暫定)最下位というヤバい現実》
posted2021/09/11 17:01
text by
山中拓磨Takuma Yamanaka
photograph by
Getty Images
リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドといった多くのビッグネームの移籍が成立し、激動の夏となった今年の欧州移籍市場だが、日本のサッカーファンにとって最大のサプライズとなったのは日本代表DF冨安健洋がイングランド・プレミアリーグの名門アーセナルへと電撃移籍したことだろう。
夏の移籍市場最終日である8月31日、英国時間の昼頃にアーセナル移籍の報道が出ると、その日の夜にはもう冨安はアーセナルの選手となっていた。
クラブの規模や世界的な知名度から言えば、冨安にとってアーセナル移籍というのはステップアップであり、大きな挑戦だといえる。
ただし、彼のアーセナル移籍を機に久々にプレミアリーグの順位表をチェックしてみた、という方がいたとしたら驚かれたに違いない。
今のアーセナルにかつての面影はなく、開幕3試合でチームは1得点も上げられず3連敗(そして最下位)と大不振にあえいでいる。
ここ5年間は一度もトップ4には入れておらず、欧州のエリートクラブの象徴ともいえるチャンピオンズリーグへの出場権も得ていない。
10年以上アーセナルを応援し続けている筆者としてはこんなことを言うのも非常に心苦しいのだが、伝統ある名門ではあるものの、最近の成績だけを見れば、アーセナルはもはや強豪とは言えないかもしれない。
“ベンゲルの22年間”からの迷走
不振の原因に関しては多くの要因が絡み合っており、一つを挙げることは難しいが、多くの問題点がクラブがアーセン・ベンゲル時代(1996~2018)からのスムーズな移行体制を整えられなかったということに端を発しているように感じられる。
アレックス・ファーガソン後のマンチェスター・ユナイテッドがかつてほどの強さを取り戻せていないことからもわかるように、やはり伝説的な長期政権を築いた監督の後を継ぐ体制を整えるというのは非常に難しく、アーセナルも現代的なクラブ組織への移行に失敗してしまった。
クラブの迷走が最も顕著に見て取れたのが、2019/20シーズンのウナイ・エメリ解任からミケル・アルテタの任命までの一連の流れだった。