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柳田、千賀、甲斐…ホークス「豊作の10年ドラフト同期組」で遅れてきた男・牧原大成28歳の逆襲 小久保コーチも「いま、外せない存在」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2021/09/12 17:03
9月2日の楽天イーグルス戦。牧原大成が則本昂大から初球先頭打者本塁打を放った
「千賀が投げる時にいつか一緒にお立ち台に立ちたいと思っていました。実現してよかった」と牧原大は少し照れくさそうな笑顔を浮かべた。2010年ドラフトの同期生。千賀が育成4位、牧原大は育成5位だった。ちなみに柳田も同年2位の入団だ。また、千賀は「あんまり(調子が)良くない中で、(捕手の甲斐)拓也が上手く散らしてくれた」と試合後に話していた。甲斐もまた同年ドラフトの育成6位だ。プロ11年目を迎えた同期生が揃って活躍する珍しい試合でもあった。
左大腿のケガ「落ち込んでしまうタイプだった」
牧原大が1番打者に定着し、しっかり出塁して中軸に回す攻撃の流れが完成してきた。これはホークスにとって大きい。
今季は当初、1番打者には周東佑京が座り続けると見られていた。しかし、打撃が振るわなかった。塁に出なければ、自慢の俊足も生かせない。首脳陣としては算段が狂った。セ・パ交流戦に突入して間もない5月27日のドラゴンズ戦で、今季初めて牧原大は1番打者で起用された。4打数1安打だったが、その1本が初回第1打席の左前打で、そこから打線がつながりホークスは3点を先取した。牧原大も柳田のタイムリーでしっかり本塁生還を果たす。
続く試合も1、2打席目に安打を放ち、チームに流れを呼び込んだ。信頼が高まり6月3日のベイスターズ戦まで7試合続けてリードオフマンを務めた。
しかし、好事魔多しというべきか、この肝心なところで左大腿を痛めてしまう。ファームに落ちた。焦って無理をして急仕上げし、一度一軍に上がるもわずか1試合でリハビリ組に戻る。
万全になって一軍に戻れたのは8月24日。随分と時間がかかってしまったが、戻ってくると毎試合ヒットを重ねた。
その好調の要因を、牧原大はメンタル面だと自己分析する。
「結果を求めすぎずに、素直に野球を楽しもうという気持ちが、好結果につながっていると思います。リハビリで野球ができなかった時に一軍戦を見ていて、みんな打てない時があっても切り替えてやっているように見えた。僕は打てなかったら落ち込んでしまうタイプだった。それじゃダメなんだ。結果だけを考えるのではなく、純粋に楽しもうと考えるようになりました」
8年目でチャンスを掴んだ「遅咲きの男」
一方で技術のところの変化はないと話したが、以前に比べれば確実に進化を見せている。打撃スタイルが変わった。