甲子園の風BACK NUMBER
星野仙一「あいつは、ええ指導者に」 野村克也も認めた「野球頭脳」…中谷仁監督42歳に“新世代の名将”感〈智弁和歌山〉
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama(Center),Sports Graphic Number
posted2021/08/28 17:40
楽天時代には星野仙一、野村克也という2人の名将から評価された中谷仁監督。母校・智弁和歌山で、その才覚が花開こうとしている
「全員で次の1点に向かっていた。選手が準備して考えてプレーしている結果」
中谷監督は試合後「選手」、「子どもたち」という言葉を繰り返し、自らの采配について詳細を語らなかった。
野村監督に「野球頭脳が高い」と言わしめた
中谷監督の人間力を評価した闘将・星野監督に対し、知将・野村克也監督は「野球頭脳」の高さを指摘した。「捕手と遊撃手は守備力」と昔ながらの考え方を貫いた野村監督が楽天を指揮した2009年、捕手・中谷は自己最多の55試合でマスクをかぶり、クライマックスシリーズでも先発した。
当時の野村監督は、嶋基宏(現・ヤクルト)を横に立たせてベンチでぼやくのが定番だったが「嶋は学校の成績がよかったと聞いて納得できる。捕手としてまだまだだが、1つ1つ学んでいってほしいと期待している。中谷は野球頭脳が高い」と評した。そして、その理由を「言われたことを応用できるし、他の捕手に言ったことを盗んで自分のものにしようとしている」と続けた。
「高嶋先生の野球を全て引き継ぐつもりで」
選手として夏の甲子園で優勝した中谷監督は、指揮官として頂点まであと1つに迫った。甲子園歴代最多68勝を挙げた高嶋前監督から引き継いだバトン。重責と戦いながら、智弁和歌山としては準優勝した2002年以来、19年ぶりの決勝進出を決めた。
「高嶋先生の野球を全て引き継ぐつもりでやっていますが、まだ自分にはできないこともあります。結果が出なければ叩かれますし、高嶋先生の後任はしんどいことばかりですが、それも覚悟の上で智弁和歌山に帰ってきたつもりですから。僕のことはどうでもいい。批判しかされないのは覚悟しているので、スマホは見ないようにしています」
柔らかい笑顔で答えた裏ににじむ責任と覚悟。中谷監督は「ええ顔」をしていた。
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