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「町田は代表で干されてますね…」162cm町田瑠唯が4年間の“控え生活”から大逆転、五輪ベスト5に選ばれるまで《女子バスケ》
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2021/08/20 11:05
東京五輪6試合で75アシスト。大会ベスト5にも選ばれた町田瑠唯(28歳)
東京羽田は、Wリーグでもプレーオフに進めるかどうか微妙なラインのチームだ。そのチームのPGを代表に呼んだのは、ホーバスHCの最良の判断のひとつに数えられる。
私は2014年、本橋が早稲田大学3年の時のプレーをほとんど見ているが、日本代表での彼女のプレーぶりに度肝を抜かれた。
特にW杯の8強入りをかけたプレーオフの中国戦、本橋は26分の出場で25点をあげ、日本のトップスコアラーになった。切れ込んでのフィニッシュ力、3ポイントシュートの成功率も申し分ない。
度肝を抜かれた理由は、大学時代は点取り屋ではなかったからだ。基礎体力、脚力は大学ナンバーワンと言ってよかったが、どちらかといえばスコアを「お膳立て」する方が得意な選手だった。
それが、ホーバスHCの望む自分から得点が出来るPGへと進化していた。
この大会では、藤岡もグループステージのベルギー戦で大活躍しており、本橋、藤岡のふたりが両輪としてオフェンスを組み立てていた。
一方の町田は、4試合で合計26分56秒しかプレー時間が与えられなかった。
2018年W杯の時点での序列は、本橋、藤岡、町田だった。
この時期、ある関係者が耳打ちしてきた。
「町田は代表で干されてますね」
スピードがある町田はユニークな存在であり、代表のメンバーには絶対に名を連ねる。しかし、PGの得点力を重んじるシステムでは序列下位に甘んじる他なかった。
藤岡がケガで引退してしまう
2019年は情勢が大きく動いた年だった。
5月から6月にかけて行われたベルギーとの試合で、本橋、藤岡、町田がタイムシェアしていたが、この時期は町田の評価が一時的に上がった。
ホーバスHCは「町田は視野が広く、渡嘉敷(来夢)との合わせのタイミングが上手い」とアシスト力を評価し、一方の本橋に関しては、「昨年のW杯では3Pシュートやドライブ、パスといろんなプレーを出していたのに、今年に入って消極的になっている」と、評価が逆転していた。