スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「町田は代表で干されてますね…」162cm町田瑠唯が4年間の“控え生活”から大逆転、五輪ベスト5に選ばれるまで《女子バスケ》
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2021/08/20 11:05
東京五輪6試合で75アシスト。大会ベスト5にも選ばれた町田瑠唯(28歳)
一方で藤岡はケガに悩まされる。大学時代から故障が多かったのは事実だが、調子が整わず、代表から漏れただけでなく、2019~2020年のWリーグの出場も1試合にとどまり、そのまま引退してしまう(指導者を志しつつ、2021年からシャンソン化粧品にて現役復帰している)。
この流れのなかで、9月にインドで開催されたアジアカップで先発を任されたのは町田だったが、大会を通じて存在感を示したのは本橋だった。準決勝のオーストラリア戦で22点、決勝の中国戦では24点を取って優勝に大きく貢献し、MVPまで獲得した。オリンピックまで1年を切り、ここで本橋の評価が定まり、町田はバックアップに回る。
そしてコロナ禍のニュースが徐々に増えてきた2020年2月、日本はオリンピックの最終予選(OQT)に参加している。日本はすでに参加枠は獲得していたが、国際バスケットボール連盟(FIBA)の規定により、開催国も参加が義務づけられていた大会だった。
この大会に参加したPGは本橋、町田に加え、吉田が復帰していた。
吉田は2019年3月に一度は引退を表明していたが、東京オリンピックを目指して9月に復帰。OQTには「トライアウトのつもりで臨んでいる」と意欲を見せていたが、オリンピックの延期という不運があり、2021年1月に現役から退いた。
本橋の大ケガ「諦めなくちゃいけないのか」
延期によって準備期間が長くなり、選手の成長が促される一方で、2020年11月の合宿では衝撃が走った。
本橋が右膝の前十字靭帯損傷の大ケガを負った。本人も「諦めなくちゃいけないのかと思いました」というほどの重大事で、ホーバス体制の司令塔はこの時点で白紙となった。HC自身も、まさか藤岡、本橋を欠くことになろうとは想像していなかっただろう。
こうなると、実績的にも1番手に繰り上がるのは町田である。
ホーバスHCは2021年4月に行われた二次合宿の最中、勝利への条件として、
「80点以上、3ポイントシュートの成功確率は40%以上」
ということを挙げていた。そしてPGの役割として、次のようにコメントしている。
「パッシングだけではなく、スペースを使ってドライブからキックアウトをしたり、得点を取ることが必要です」
まだ、PGに得点力を求めていることが分かるが、この合宿での町田のコメントはややニュアンスが違う。
「(3ポイントについては)これまでもシュートのことは言われているので、積極的に狙っていきたいです。しかし、それほど多く打つことはないですし、ガードでもあるので流れを見ながら打つべきときにしっかり打って、それを決められるようにしたいです。シュートの確率が高い選手も多いので、自分がクリエイトしてシューターに打たせる機会を増やしたいです」
町田「スモールラインナップであえて小さく…」
そしてもうひとつ注目すべき発言がある。