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「町田は代表で干されてますね…」162cm町田瑠唯が4年間の“控え生活”から大逆転、五輪ベスト5に選ばれるまで《女子バスケ》
posted2021/08/20 11:05
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Getty Images
町田瑠唯は、いつも日本代表で「3番手」の選手だった。
しかし、オリンピックですべてが変わった。
これまで“RUI”といえば八村塁のことを指していたが、いまや町田のことを思い浮かべる人も多いだろう。評価はうなぎ上り、アメリカのバスケットボール関係者のSNS上では、WNBAでのプレーを期待する声もある。
ポイントガード(PG)は、オフェンスのリズム、流れを作る指揮者だ。どんなタイプの選手がボールを扱うかでチームのスタイルは変わってくる。
2017年にトム・ホーバス氏が日本代表のヘッドコーチに就任したが、彼が好むタイプは自分からスコアできる選手だった。
町田は抜きんでたスピードで必ず代表には選ばれるのだが、点取り屋ではなく、「パッサー」である。そのため、代表では3番手に甘んじることが多かった。
前回のリオデジャネイロ大会が終わってから、「東京で司令塔になるのは彼女だろう」と衆目が一致していたのは藤岡麻菜美だった。
藤岡は2016年に筑波大学を卒業し、JX-ENEOSに入ったが、身長が169cmあり、日本のPGとしては大型なのが魅力だった。自分から仕掛けられ、フィジカルで負けない。しかも、真面目でフロアリーダーの風格があった。
藤岡は2017年のアジアカップで台頭する。この大会では長年、日本を引っ張ってきた吉田亜沙美が準々決勝の台湾戦で負傷し戦線を離脱。すると、藤岡が先発に入り、準決勝の中国戦で19点、14アシスト、8リバウンドのトリプルダブル級の活躍を見せる。これはまさに世代交代を象徴する試合で、藤岡の信頼度が高まった。
しかしこれで「面が割れて」しまった藤岡は決勝のオーストラリア戦で徹底マークにあい、この危機を救ったのが3番手に甘んじていた町田だった。ベンチスタートから30分以上プレーし、9アシスト。1点差での優勝に大きく貢献した。
藤岡と町田ではタイプが違い、手詰まりになった時にお互いがカバーし合える。その意味で、町田は欠かせない選手だったが、先発に起用される機会はなかった。
3年前「町田は代表で干されてますね」
そして2018年のワールドカップ・イヤーに、意外な選手が台頭してくる。東京羽田でプレーしていた本橋菜子だ。