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セルジオ越後17歳を「サトウ、うまいじゃないか」とホメて、75歳で25歳年下の日系人女性と結婚… ペレと日本の意外な縁
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2021/08/16 11:02
フットボール界の王様ペレとC・ロナウド(2013年撮影)
決勝のスウェーデン戦では、ゴール前で左後方からのクロスを胸でトラップしてマークを外し、別のDFを頭越しにボールを浮かせて抜いてから(ブラジルではこのプレーをシャペウ=帽子と呼ぶ)、ボレーシュートを叩き込んだ。
当時、こんなプレーをする選手は世界のどこにもいなかった。それを、17歳の少年がW杯の大舞台でやってのけたのである。
「生涯最高」のゴールと奇想天外なプレーの数々とは
1959年のサンパウロ州選手権ジュベントス戦では、ペナルティエリアのすぐ外側で右からクロスを受けると最初のマーカーをシャペウでかわし、別の選手をこれまたシャペウで置き去りにし、さらに飛び出してきたGKもシャペウで振り払うと、頭で無人のゴールへ送り込んだ。シャペウの3連発。こんなプレーは、未来永劫、誰にもできないのではないか。このときペレは18歳で、ペレ本人はこのゴールを「生涯最高」としている。
1970年W杯のグループステージのチェコスロバキア戦でも、当時としては前代未聞のプレーを敢行した。
自陣でブラジル選手が相手ボールを奪い、それがペレに渡った。前を向き、相手GKが前へ出ているのを咄嗟に察知すると、センターライン手前から超ロングシュートを放った。ボールはゴールへ向かって一直線に飛び、GKは大慌てで後退。GKはボールに追いつけそうになかったが、シュートは右のゴールポストをわずかに外れた。
この大会の準決勝ウルグアイ戦でも、奇想天外なプレーをみせた。左斜め後方からのグラウンダーのパスを受けようとしたが、相手GKが飛び出してきた。このとき、GKが自分の体に抱きついてファウルで止めようとしているのを察知し、咄嗟にパスをスルー。GKは想定外のプレーに混乱し、ボールとペレの体の両方を取り逃す。ペレはすぐにボールに追いつくと、反転してシュート。しかし、惜しくも左ゴールポストを外れた。
この1970年W杯大会の2つのプレーはいずれも得点になっていない。しかし、ペレがその類まれな創造性がいかんなく発揮した異次元のプレーであり、ブラジルでは「フットボール史上、最も美しい失敗シュート」と言われている。