伊藤「個々の力を上げることがチームワークにつながる」

　石川と平野に関しては2019年の壮絶な東京五輪代表争いで、最後の最後までシングルスの2枠目を争い火花を散らした。それでも東京五輪では団体戦のダブルスペアとして見事なコンビネーションを見せた。

　代表の座をめぐり、身を削るほどの死闘を繰り広げたライバルの2人が、いざとなれば力を合わせられる。もしこれが職場や学校の人間関係だったら……相当きついだろう。

　しかし、試合で勝つことが使命の彼女たちは、特にリオ五輪まで5試合マッチの3番だったダブルスが東京五輪では1番に繰り上がり、試合の流れを左右するのはダブルスだと言われたため、今までにないほど時間をかけてダブルス練習をやり込んだ。その中でサービスとレシーブから先手を取る攻撃パターンのバリエーションを増やし、本番で見事に発揮した。

　石川は大一番の決勝前夜、こう言った。

「まずは自分を信じること、仲間を信じること、決勝の舞台を楽しむこと。それを目標に目の前の一球一球に集中して最高のプレーがしたい」

　そう、チームが勝つために最優先すべきは自分なのだ。

　また伊藤も以前、卓球女子チームのチームワークについて記者団にたずねられ、「個々の力を上げることがチームワークにつながる」と話していた。

　さて、今回の卓球女子チームはなぜ上手くいったのか？

　それは個々の競技力が高く、互いにそれを認め合い、何よりも大舞台での勝利を強く望む3人だったからなのだろう。