核心にシュートを!BACK NUMBER
「オフにはジェッツの試合を観戦」「3Pに身体をぶつけて祝福」日本代表を牽引する富樫勇樹と渡邊雄太の“固い絆”
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2021/07/28 20:00
オリンピック初戦のスペイン戦にて、途中出場ながら存在感を発揮した富樫勇樹
しかし、富樫がそうはさせなかった。1Q終了間際のチーム全員で粘り強くパスを回し、ドライブを繰り返した上で決めたフローター(相手のブロックをかわすようにふわっとした軌道でのシュート)。第2Q残り6分4秒での、通常よりもはるか後方から放って決めた、3Pシュート。そして、追い上げを見せる第4Qが始まって1分弱の時点で、ファウルを受けながら決めたバスケットカウント。限られた時間できちんと仕事をして見せた。
確かに、Bリーグの日本人選手として史上初めて1億円プレーヤーになった富樫ならば当然のように見えるかもしれない。
だが、そうではない。むしろ、最近の試合では本来の力を発揮できていなかった富樫が、この舞台で力を発揮したことに大きな意味があった。
渡邊「彼の強みって『得点力』にあると思うんです!」
キーとなったのは、オリンピック前最後の強化試合。世界ランク6位につけるフランスとの一戦だった。あの試合で、前の試合まで鳴りを潜めていた富樫の復調を、特に喜んでいる選手がいた。キャプテンの渡邊である。
富樫が3Pを決めた直後に相手がたまらずタイムアウトをとったときには、富樫がベンチに戻るのを待ち構え、身体をぶつけて祝福した。他にも、大男の間を167cmの富樫がすり抜けてレイアップを決めたとき、渡邊はベンチに座っている時間帯だったが、ベンチから立ち上がり、あの日一番とも言えるほどの喜びようだった。
「意識的にやったわけではなくて多分、勝手に体が喜んでいたんだと思います(笑)。基本的に、僕は誰が点をとっても喜んでいると思うんですけど……」
フランス戦後に渡邊は断りをいれた上で、こう続けた。
「彼よりも何十センチも大きい選手を相手にインサイドに切り込んでいって、シュートを決めきる姿と言うのは、見ている子たちにもすごく勇気を与える得点だったと思います。それに、彼の強みって『得点力』にあると思うんです! それを今日は全面的に発揮してくれていたので」