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「オフにはジェッツの試合を観戦」「3Pに身体をぶつけて祝福」日本代表を牽引する富樫勇樹と渡邊雄太の“固い絆”
posted2021/07/28 20:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
男子のバスケットボール日本代表が、モントリオール大会以来45年ぶりにオリンピックに帰ってきた。Bリーグというプロリーグが日本に生まれてから5年、オールプロで初めて臨んだ晴れ舞台である。
7月26日、初戦の相手は世界王者スペイン。2年前の中国W杯で頂点に立った彼らは、国際バスケットボール連盟(FIBA)の世界ランキングで2位につける。一方、そのW杯で参加国32ヶ国中31番目の成績に終わった日本のランキングは42位だった。
それでも王者相手に77-88で食らいついた。後半のスコアだけを見れば、49-40と上回った。
王者を相手にファイティングポーズを保ったまま40分を戦い終えたことは、これからの先の戦いに大きな意味を持つ。
今ではお茶の間にも深く浸透しているエースの八村塁と、キャプテンを務める渡邊雄太という2人のNBAプレーヤー。そして、現在の世界ランキング3位につけるオーストラリアの国内リーグで優勝したばかりの馬場雄大。彼ら3人がチームを引っ張ることを求められるのは当然だ。
ただ、大会前にこう語っていた選手がいた。
「日本代表の中心になるのは海外で活躍してる選手ですけど、キーになるのはBリーグでプレーしている選手たちだと思っていて。3人の活躍はもちろん見込めますが、その3人の力だけでは勝つことはできません。Bリーグで戦っているメンバーが世界の強豪相手にどれだけできるかにかかっていると思うんです」
昨シーズンのBリーグで初優勝を飾った千葉ジェッツでキャプテンを務める富樫勇樹である。
第一Q、田中大貴のピンチに富樫は…
身長167cmの富樫は、現在のフリオ・ラマスHC(ヘッドコーチ)が就任した2017年7月から、ケガで欠場した場合をのぞき、司令塔であるPG(ポイントガード)の不動のスタメンだった。
ただ、厳しい戦いになるのがオリンピック。大会前にラマスHCは守備戦術の観点から、本職はSG(シューティングガード)ながら192cmの田中大貴を、PGのスタメンにすえることにした。そのため、富樫は2人目のPGとしてベンチに控えることになった。
ところが、スペイン戦の第1Q(クォーター)の残り3分54秒の時点で、田中が早くも2つ目のファウルを犯す。40分の試合で5つファウルを犯したら退場するルールだから、富樫はいつもより早めに出場することになった。
スタメンの選手が想定よりも早くベンチに下がる。通常であれば、不穏な流れとなるはずだった。