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「シンクロした4枚攻撃ができている時の日本は…」バレー女子のカギ握る20歳セッター籾井あき 中田久美、吉原知子が重宝する理由は?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAsami Enomoto
posted2021/07/25 11:02
所属するJTでの活躍もあり、日本代表でもレギュラーの座を掴んだセッター籾井あき(20歳)。本大会では背番号12をつける
古賀はネーションズリーグの前、籾井について、「バックアタック(パイプ)の使い方がすごく上手だなと、一緒にコートに入っていて感じるので、私もバックアタックの意識を忘れずに、常にバックアタックを使えるようにしたら、得点チャンスも増えるし、セッターの強みも生かせる」と語っていた。
籾井は、少し1本目が乱れてミドルブロッカーが使えない場面でも、パイプを選択肢から消さない。
「ラリー中はAパス(セッターの定位置への返球)が返ることが難しい。そうなった時に1番速いテンポの攻撃がパイプ攻撃だというふうに認識して使っています」と言う。
そうした意識はJTで徹底して叩き込まれた。JTの吉原知子監督は、練習中や、映像を見ながら、「今の場面はこうなっているよね」と逐一籾井に落とし込んでいった。
「この状態ではどこが1番速いとか、このシチュエーションならここがこうなると、まずしっかり頭の中でバレーボールを理解しないと、実際に試合でコートに立った時に、自分のチョイスの中に入ってこないですから」
高校2年でセッターに転向
ただ、理想的な攻撃展開も、今のところは「いい状態の時はできる」と条件がつく。高校2年で本格的にセッターを始めた籾井は、まだ経験の浅さや粗さが顔を出すこともある。吉原監督は、籾井の課題は「我慢と状況判断」だと言う。
ネーションズリーグでも後半戦は、サーブレシーブを崩されてセッターが走り回る展開が増えたり、相手がラリー中、徹底的に籾井に1本目を取らせてコンビを封じるなど、ストレスをかけられる中、トスに乱れが生じた。
帰国後、籾井は反省しきりだった。
「特に準決勝や最後の3位決定戦は、自分の課題をドーンと見せられた感じでした。1番の課題はトスの精度。最後の何試合かは思うようにトスが上がらなくて、スパイカーにすごいストレスをかけてしまった。スパイカーに打たせきれていなかった。迷いがあって、ここに上げるという決断が遅くなったりもしていた。パイプに関しても、(スパイカーが)アタックラインを踏んでしまうことがあると、メンタルがちょっとウッときてしまって、上げるのを躊躇してしまった。五輪までの期間で精度を上げて、どれだけ合わせられるか、信頼関係を作れるか、妥協しないでやっていきたい」
ただ、それでも、中田監督は籾井を使い続けた。JTの吉原監督も、2019-20シーズン、八王子実践高校から入団したばかりの1年目の籾井を正セッターに抜擢し、我慢強く使い続けた。
籾井には「使いたい」「育てたい」と思わせるものがある。