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《78kg→87kg》吉田麻也が明かす“3年前の体重激増”の真相と超厳しい英国ドーピング事情「日本人選手はフィジカルが足りない」
posted2021/07/21 17:01
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Takuya Sugiyama
2018年10月5日、日本サッカー協会からメディア向けに、こんなアナウンスが届いた。
「10月12日にパナマ代表、10月16日にウルグアイ代表と対戦するSAMURAI BLUE(日本代表)のメンバー・スケジュールをお知らせします。(追記)吉田麻也選手の身長/体重に誤りがございました。お詫びすると共に訂正をさせていただきます」
新たに発表された吉田の体重に、驚いた――189cm、87kg。
3カ月前まで戦っていたロシアW杯での登録体重は、78kgだった。たった3カ月で9kgも増えている。まさかの“激太り”!? いやいや、そんなはずはない。所属するサウサンプトン(当時)での試合映像を見れば、体は厚く、強くなっているものの、かなり引き締まっていた。
あれから3年。東京五輪の登録体重も87kgだ。32歳になっても、肉体に衰えなし。マークする相手FWに縦パスやクロスが入れば、力強く体をぶつけてボールを奪い取る。試合ごとのパフォーマンスの波も少ない。だからこそ、日本サッカー史上初めて2度目のオーバーエージ枠に選ばれた。そんな頼れるキャプテンに、3年前の“体重激増”の真相と、肉体改造の秘密を聞いた。
ベンテケに吹っ飛ばされた
――3年前、いきなり登録体重が「78kg」から「87kg」に変わったときは、驚きました。
「実は『78kg』って、僕がA代表デビューした2010年1月のアジアカップ予選イエメン戦のときに量った体重なんです。以来、ずっとそのままになっていて。ロシアW杯が終わったタイミングで、さすがに『変えてください』と協会にお願いしました」
――確かにヨーロッパでプレーするようになってから、ずっと「体重を増やしたい」と話していました。
「特に、2012年にサウサンプトンへ移籍してからですね。この体重で、イングランドでは戦えないなって。当時の僕は、まだヨーロッパで戦える準備ができていなかった」
――そう感じるきっかけになった試合は?
「移籍して2試合目のアストン・ビラ戦です。FWクリスティアン・ベンテケとマッチアップしたときに、痛感しました。ベンテケの体の強さは尋常じゃなくて、簡単に吹っ飛ばされて。守備側の技術とかセンスとか、そういう問題じゃなかった。これはヤバい。体重を増やさないと、太刀打ちできないなって」
――とはいえ吉田選手は元々、食が細いタイプではない。普段から、しっかりと食べていました。そこから体重を増やそうと思っても、簡単じゃないでしょう。
「まずは栄養士を質問攻めにしました。サウサンプトンの栄養士は、ラグビーのイングランド代表と兼任していて、エディー・ジョーンズさんと仕事をしている人です。ラグビーの選手は、速さと強さと大きさを兼ね備えている。戦士のようですよね。だから、いつ・何を・どのように食べればいいか、ありとあらゆる質問をしました。もちろん、急激に体重を増やすのは良くない。まずは最初の半年間を使ってぐっと体重を増やしつつ、体脂肪率を落とす。そこからは徐々に体重と筋量を増やしたイメージです」