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東京五輪も出場濃厚“18歳のスタミナお化け” …メッシが認め、監督が「クレイジー」と脱帽のペドリが感じる幸せとは?
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2021/07/15 17:00
スペイン代表のベスト4進出に貢献したペドリ。18歳の逸材は東京五輪にも参戦する
向こう10年のスペイン代表は安泰のようにも思える
大幅に若返りが進み、戦前は国内でも決して評判が高くなかったチームが、例によって決定力に難を抱え、ラウンド16のクロアチア戦、準々決勝のスイス戦と、リードを守り切れずに延長にまで引きずり込まれたチームがベスト4にまで勝ち上がれたのは、ペドリという発見があったからに他ならない。
とりわけ敗れたイタリア戦に“ティキタカ”の完全復活の予兆を見たが、ペドリがいるかぎり──ブスケッツの後釜に不安は残るが──、向こう10年のスペイン代表は安泰のようにも思えてくる。
「こんな18歳を、私はこれまでに見たことがない。今大会のペドリのパフォーマンスは“クレイジー”ですらあったよ」
L・エンリケの感嘆が、すべてを言い表している。
心配なのは、疲労の蓄積によって、このとてつもない才能が壊れてしまうリスクだ。にわかには信じられなかったが、EUROの激闘を終えたペドリは、わずかな休息を挟んで東京五輪にも参戦するという。
ボールと戯れることにこの上ない喜びを覚える
同じくEURO組のダニ・オルモやミケル・オジャルサバル、パウ・トーレスらも合流するスペインU-24代表は、紛れもなく東京五輪の金メダル候補だろう。そのドリームチームでペドリは再び中軸を担うはずだが、ブスケッツや、主戦場の左サイドで頼りになったジョルディ・アルバという“精神安定剤”がない中で、どこまでパフォーマンスを維持できるかも、コンディションとともに注視したいポイントだ。
とはいえ、ペドリならきっと大丈夫だろうと、そんな確信めいた思いもある。
PK戦の末に敗れてファイナル進出を逃した後、彼はチアゴの胸を借りて、ずっと泣きじゃくっていた。そこにやり切った清々しさや充実感は、微塵もなかった。
「疲れはないかって? 大好きなサッカーができるんだから、これ以上の幸せはないよ」
プレーすることに、ボールと戯れることに、この上ない喜びを覚えるペドリは、過密スケジュールにも決して音を上げない。敵のタックルと同じように、襲いかかる疲労も淡々とやり過ごしてしまうような気がしている。
17年前のルーニーは、準々決勝のポルトガル戦で右足を骨折し、そのまま大会を去った。そして、イングランドに多くの物をもたらすであろうと期待された彼が、その後のメジャートーナメントで、あのEURO04以上に輝くことは一度もなかった。
しかし、ペドリは違うと信じている。世界一働き者の18歳と新生スペイン代表の旅は、まだ始まったばかりだ。