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東京五輪も出場濃厚“18歳のスタミナお化け” …メッシが認め、監督が「クレイジー」と脱帽のペドリが感じる幸せとは?
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2021/07/15 17:00
スペイン代表のベスト4進出に貢献したペドリ。18歳の逸材は東京五輪にも参戦する
信じがたいのは、2020-21シーズンのバルセロナで、移籍1年目、トップリーグ初挑戦にもかかわらず、公式戦52試合を戦った直後だったという事実だ。シャビやアンドレス・イニエスタが去って以降、リオネル・メッシがついに見つけた「感性の部分で通じ合えるボールプレーヤー」は、バルサにおいても瞬く間に不可欠な存在となっていた。
昨シーズン開幕前、退団騒動に揺れたメッシに笑顔を取り戻させたのは、バルサのカンテラ育ちではない、このカナリア諸島出身のテクニシャンだったのだ。
“ゴールの2つ前のプレー”で違いを作り出す
確かにグループステージの1、2戦は、フル稼働したシーズンの疲れを引きずっているようにも見えた。しかし、スロバキアとのグループステージ第3戦で、バルサのチームメイト、セルヒオ・ブスケッツが新型コロナ陽性から復帰し、アンカーのポジションに収まると、本来の躍動感を取り戻す。
言うまでもなく、単なるスタミナお化けではない。するするとバイタルエリアに潜り込んでボールを引き出し、ショート~ミドルレンジの多彩なパスで自在に前線を操る。キープ力も抜群で、ボールロストが滅多にない。アシストこそなかったが、いわゆる“ゴールの2つ前のプレー”で違いを作り出すのだ。
例えば、準決勝イタリア戦では、13分、25分、39分と少なくとも前半に3度、ペドリを経由して決定的なシーンが生まれている。これを1つでも決めていれば、結果も違っていたかもしれない。ちなみにこのイタリア戦のペドリは、実に98%という驚異的なパス成功率を記録している。
しかもこの18歳が末恐ろしいのは、難しいプレーを実に淡々と、涼しい顔でやってのけるところだ。試合を重ねるごとに厳しくなる相手のチャージをクールにかわし、たとえファウルで削られても平常心を失うことがない。プレースタイルのみならず、このあたりも「イニエスタの後継者」と呼ばれる所以であろう。
「誰でもミスはする。彼がチームのために懸命に働いていたことはプレーを見ていれば分かったはずだ。とにかく、僕たちを信じ続けてほしい」
スコアレスドローに終わったスウェーデン戦後、決定機を逃し続け、ブーイングを浴びたアルバロ・モラタを、ペドロはこう言って擁護した。とてもメジャートーナメントデビューを飾ったばかりの18歳のコメントとは思えない。