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アズーリは53年分の“EUROの呪縛”を解き放てるか…御大ゾフが「チームがひとつになるだけでは不十分」と語ったワケ
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/07/11 11:02
PK戦の末にスペインを下し、ファイナルへ。イングランドとの決勝で、53年ぶりの欧州王者を目指す
来年80歳になる彼は、2012年ウクライナ/ポーランド大会の決勝戦で智将チェーザレ・プランデッリが率いたイタリアがスペインに喫した大敗も踏まえ、アズーリの欧州制覇に何が足りないのかを静かに訴えた。
「チームがひとつになるだけでは不十分なのだ。必要なのは、一人ひとりの責任感だ」とゾフは言う。
「あらゆる勝者のチームがそうであるように、68年の代表も、一人ひとりが『自分はこのチームで何をすべきか』を完全に理解していた。皆が責任感の塊だった」
選手と監督両方の立場で決勝戦の天国と地獄を経験したゾフは、EUROを制するためには馴れ合いの友情ごっこなどいらん、と言っているのだ。流石に戦時中生まれの言葉は重い。
軽やかな覚悟で11日の決勝戦へ挑むべき
アズーリが優勝した1968年大会は、現在の目で見ればかなり変則的な大会だった。
イタリアでの本大会出場4カ国を決める予選プレーオフの組み合わせは、ブルガリア対イタリア、ハンガリー対ソ連、スペイン対イングランド、フランス対ユーゴスラビアの4カードだった。今と相当異なる、53年前の欧州サッカー勢力図がうかがえる。
本大会は準決勝2試合と決勝2試合、そして3位決定戦のわずか5試合。コイントスでの決着も2度の決勝戦も今では想定外だし、規模も大会期間も現在とは比較にならない。
そして今回、EURO2020におけるイタリア代表は、素晴らしい戦いぶりでファイナルまで勝ち上がってきた。魂のこもったプレーの一つひとつを世界中が目撃している。望むか否かを問わず、今はスマホとSNSの時代だ。
サッカー史におけるタイトルの意味とコンペティションの熱さは同じであると強調した上で申し上げたい。
今大会ではイタリアのみならず、さまざまな国籍の選手たちが、仲間や家族、国を思う気持ちをグラウンドの内外で示してきた。
2021年のアズーリは、御大ゾフの金言を杞憂だと笑い飛ばしながら、自分たちが新しい歴史を作ってやるという軽やかな覚悟で11日の決勝戦へ挑むべきだ。
ソ連もユーゴスラビアもなくなった欧州で、サッカーの母国での決勝にカルチョの国が挑む。
聖地ウェンブリーであろうが、グラウンドにあるのはサッカーだけだ。
アズーリよ、53年分の呪縛など吹きとばせ。