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多田修平25歳は高3まで「全国レベルで優勝できなかった」…日本選手権1位に急成長するまで“不調だった3年間”
text by
生島淳+Number編集部Jun Ikushima + Sports Graphic Number
photograph byGetty Images
posted2021/06/29 17:15
日本選手権陸上男子100mを10秒15で制し、初の五輪切符を手に入れた多田修平
多田は40m地点でひとりだけ秒速11mに到達していた。多田が最高速に達したのは55m地点で、秒速で11.37m。70m、80m地点で多田を上回っていたのは2着に入ったデーデー・ブルーノ(東海大)だけで(60m、70m地点で秒速11.38m。200mも2位に入った彼は高速域が長い)、ライバルにとっては多田との差が縮まらない厳しいレースになった。
NHKでの高平慎士氏の解説は明快で、
「多田選手に追いつけないと感じ、70m以降はみんな力んでしまいましたね」
と、多田の中盤にかけての加速が、ライバルたちの焦りを誘ったことを指摘した。
去年までの多田と、立場が逆転したのだ。
2017年からの多田を振り返ってみると、スプリンターの世界は、数年連続で調子を維持することが極めて難しいことに気づく。
日本選手権の優勝者を見ても、
2017年 サニブラウン
2018年 山縣亮太
2019年 サニブラウン
2020年 桐生祥秀
2021年 多田修平
と毎年変わっており、連覇を達成したのは2012年の江里口匡史(この時は4連覇)まで遡らなければならない。
10秒という時間の単位は漫然と過ごせばアッという間に過ぎ去ってしまう。
しかし100mの世界では、その密度は限りなく濃く、レースでは技術、メンタル、気象、あらゆる条件がタイム、着順を左右する。スプリンターは自らの肉体をチューンアップするエンジニアであり、ドライバーでもある。
2017年、走ることが楽しくて仕方がなかった多田修平は、上を目指すことになったがゆえに、迷宮を経験し、苦しみもした。
しかし2021年6月、彼が作り上げてきた数々のピースが、パズルにすべてハマった。
重要な試合で最高の状態を作る。
これもまた、才能のひとつである。
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