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『私が欲しかったもの』摂食障害、窃盗症との苦闘。アスリートの「弱さ」を考える。
text by
岡部祐介Yusuke Okabe
photograph bySports Graphic Number
posted2021/06/29 07:00
『私が欲しかったもの』原裕美子著 双葉社 1430円
本書は、元トップアスリートでマラソンランナーの原裕美子氏がこれまでの人生を回顧し、心境を綴った記録である。それは彼女が人知れず抱えてきた「生きづらさ」の告白でもある。
アスリートは、徹底した競争原理のもとで卓越性を追求していく。優勝劣敗の能力主義が支配する競技スポーツの世界に身を投じるアスリートの姿から、私たちは厳しい環境を生き抜く「強さ」をみいだすことができるだろう。
ところが、本書では過度な体重管理によって引き起こされた摂食障害、その影響による窃盗と逮捕を振り返り、その後診断された窃盗症(クレプトマニア)を克服するための苦悩や葛藤が語られていく。そこにはアスリートとしての輝きや強さとは対極的な「弱さ」がみられる。