酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
オリックスを変えた“苦労人”の中嶋聡監督 山田久志や松坂、ダルの球を受けた“捕手らしい”の采配を数字で分析
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2021/06/29 06:00
現役時代は強肩捕手として知られた中嶋聡監督。オリックスの好調を指揮官として引っ張っている
野手成績を見て、明らかに伸びた選手は……
<主なレギュラー野手の顔ぶれ>
2020年 西村監督時代 開幕から8月20日まで
捕手 若月健矢 3本 13点 1盗 率.238
一塁 T-岡田 7本 30点 1盗 率.244
二塁 大城滉二 0本 7点 6盗 率.205
三塁 宗佑磨 1本8点 2盗 率.232
遊撃 安達了一 1本10点 4盗 率.299
外野 吉田正尚 7本 32点 3盗 率.369
外野 ロドリゲス 5本 19点 1盗 率.224
外野 小田裕也 0本 4点 1盗 率.234
DH A・ジョーンズ 5本 23点 1盗 率.235
2021年 中嶋監督時代 開幕から6月27日まで
捕手 伏見寅威 2本17点0盗 率.234
一塁 T-岡田 8本35点1盗 率.266
二塁 太田椋 2本8点1盗 率.169
三塁 宗佑磨 5本20点5盗 率.265
遊撃 紅林弘太郎 5本26点1盗 率.235
外野 吉田正尚 15本48点0盗 率.343
外野 杉本裕太郎 15本47点2盗 率.317
外野 福田周平 0本10点3盗 率.326
DH モヤ 7本24点0盗 率.249
最初に目につくのはラオウこと杉本裕太郎の躍進だ。打線で見ると吉田正尚の後ろを打つ打者を固定できずにいた。アダム・ジョーンズやアデルリン・ロドリゲス、スティーブン・モヤなど外国人選手が試されたがどれもうまくいかず、二軍でくすぶっていた杉本が抜擢され期待に応えた。二軍監督だった中嶋監督の慧眼だろう。
また遊撃では、長きにわたって守備の要として活躍してきた安達了一に代えて19歳の紅林弘太郎を抜擢した。まだ粗削りだが、打者としてもスケールが大きく期待感がある。
さらにT-岡田、宗佑磨など昨年からのレギュラークラスは、今季の方が成績が上がっている。
頓宮、伏見、若月といる中での捕手起用も興味深い
そしてあまり目立たないが、捕手の起用は、オリックス急上昇のポイントではないか。
中嶋監督は打撃の良い頓宮裕真を抜擢するつもりだったようだ。開幕戦はエース山本由伸と頓宮のバッテリーだった。良く知られているように2人は岡山県備前市出身、生家が隣同士で、山本は2歳年長の頓宮とキャッチボールをするような間柄だった。
そうした誼もあってバッテリーを組ませて伏見と併用した。山本の投球内容は悪くなかったものの、山本-頓宮が3試合連続で勝ち星がつかないとみるや、中嶋監督はスパッとあきらめて山本-伏見のバッテリーに固定した。
昨年まで、オリックスは打撃の良い若月健矢を正捕手に、伏見を2番手捕手とする布陣だったが、中嶋監督はリード面に着目して伏見を正捕手に固定した。捕手出身監督ならではの玄人好みの用兵だと言えよう。