令和の野球探訪BACK NUMBER
2年ぶりの大学野球選手権で評価アップ「契約金を数千万稼いだ」スターが誕生? 慶大4番・正木智也だけじゃないドラフト候補たち
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2021/06/17 17:06
34年ぶり4回目の優勝を達成した慶應大。勝利の瞬間、マウンドに歓喜の輪が広がった
こうした選手たちの評価の上がり方からも分かるように、昨年は中止となったこの大会が開催された意義はとてつもなく大きい。さらに昨年に続いて侍ジャパン大学代表の活動が中止になっており、プロや社会人を目指す選手、特に地方リーグの選手たちにとっては数少ないアピールの場になった。
またスカウトからしても、好素材同士の対戦は単にその結果だけではなく対応力や精神力など公式戦でしか見えないものが多かったはずだ。
そして何より、どのチームにとっても最大の目標となる「日本一」を争う場があったことは、喜び以外の何物でもなかっただろう。多くの監督や選手が大会の開催や野球ができることへの感謝を語り、「無念の思いをした昨年の4年生のためにも」という言葉も各所で聞いた。
その思いはどの試合でも表れ、どの大学もハツラツとしたプレーが目立った。
本塁打を放った後のテレビカメラへ向けたパフォーマンスに一部では苦言を呈されたが、未だ続く新型コロナ禍で東京に来られなかった家族や仲間、普段応援してくれている方々へのメッセージを送る意味合いもあっただろう。対戦相手への配慮はあったし、カメラの向こう側にも「相手」はいるのだ。
スターの誕生や学生らしい喜怒哀楽を見て、あらためてこの大会の魅力を体感した。来年も必ずこの大会が無事開催されることを、感染症のことなどをあまり考えなくてもよいような状況で行われることを切に願いたい。