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【50歳】前田智徳と鈴木誠也が似ている? 山本浩二や達川光男が語った「前田は天才じゃない」22歳当時の“仰天発言”も
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNaoya Sanuki
posted2021/06/14 06:00
孤高の天才と呼ばれた前田智徳も今年で50歳。現在は解説者としてユーモアあふれるトークで野球ファンを魅了している(写真は1992年)
<名言3>
いや、きた球を打つんですよ。
(前田智徳/NumberWeb 2005年7月21日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/12342
◇解説◇
「いやあ天才じゃない」
前田智徳を評する達川光男の言葉である。即答だった。
「あれはね、僕はとにかく練習でここまできました、そう言うたね。突然、閃いたらバット振るらしい。ワシなら閃いても、まあ明日にしようか思うけどね」
1990年から92年、現役時代は少しだけかぶっている。ある日のバント練習。頭脳派で鳴らしたベテラン捕手は、熊本からやってきたルーキーに声をかけた。
「バッターボックスに入って、どの球、待っとるんや」
まだ少年の顔だった前田は答える。
「いや、きた球を打つんですよ」
それから15年後、スタジアムそばの飲食店で、のちに監督としても「きた球を打つ男」と接した達川光男は笑っていた。
「凄いな、お前。そう言いましたよ。それが最初の会話やったね。最初から左(投手)を苦にしなかったのも印象に残っとるね」
監督時代(1999年~2000年)は前田を4番に据えた。
「僕ではふさわしくない。そう言うたよね。アキレス腱を切ってなかったら喜んで打たせてもらいますと。いまは故障したら治す自信がない。4番は1年間すべて出なくてはならない。ものすごく4番という打順に敬意を表したよね。そういう人間なんです。個性派のようで気を遣うタイプじゃね」
アキレス腱断裂という選手生命を左右する負傷をした後も、打率3割は記録し続けた。
「ただ本人が言っとったけどね。僕は復帰はしたけど復活はしてません。打って守れて走れたら復活ですと」
懐かしそうに続ける。
「そういえば、この前は試合中のコメントでこう話した。開かずに開いて打ちました。下半身は開いても右肩は開かないという意味や思うけどね。復帰はしたけど復活はしてない。開かず開いて打つ。うまい表現よね。研究するんですよ。ミーティングも聞かんふりしてよう聞いとる。ビデオも見らんふりしてよう見とる。きた球を打つんやけど読みも凄いよ。相手が自分をどう攻めるかを考えながら練習する。自分で自分をよう知ってるの」(達川)