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「嫉妬心」を力に…“ビースト”林大地はU-24のシンデレラボーイとなるか 野心が宿る目と強運に思い出す鈴木隆行
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO SPORT
posted2021/06/11 17:03
がむしゃらに、愚直にゴールを狙う林大地。“最終試験”のジャマイカ戦で再びのアピールなるか
前半の終了間際、相手ディフェンスラインの裏に飛び出し、瀬古歩夢のロングフィードを引き出すと、GKとの1対1を制してゴールネットを揺らし、トレードマークになっている雄叫びをあげたのだ。
堂安の負傷辞退で巡ってきたチャンスを生かして
実は、このアルゼンチン戦のゴールは、生まれない可能性もあった。
2020年シーズンに大阪体育大からサガン鳥栖に加入し、9ゴールをマークしたものの、約1年ぶりの代表活動となった昨年12月の千葉合宿に林は招集されなかった。
3月のアルゼンチン戦のメンバーにも当初、林の名前はなかった。堂安律が負傷で辞退したため、追加招集という形で転がり込んできたチャンスだった。
「正直、びっくりしています。アンダーの代表活動に呼ばれたことがなかったので。ユニバー(シアード日本代表)のメンバーが選ばれているのを見て、いつか自分も選ばれたいと思っていたけど、いろいろなタイミングが重なって、今回呼ばれてびっくりしています」
本人もそう驚く代表初招集で、初ゴールを決めてみせた。
20年12月の千葉キャンプには2020年シーズンに活躍した大卒1年目の選手たちが数多く招集されたが、そのすべてが落選するなか、林だけが本大会に向けた最終選考の場となる6月シリーズに生き残ったのだった。
堂安はガンバのジュニアユースで1年後輩
その堂安とは、少しばかりの因縁がある。
林にとって堂安はガンバ大阪ジュニアユース時代のひとつ後輩にあたる。
上の世代に混じって主力としてプレーし、ユース昇格、飛び級でトップ昇格、海外へと羽ばたいていった堂安に対し、林はユース昇格を逃し、履正社高、大阪体育大と、回り道を経験してプロの扉を叩いた。
「中学の頃、僕はほとんど試合に出ていなかった。律は1個下だけど、僕の代でしっかり食い込んで、試合にも出ていた。自分のステージとは違うと思う。近づいてきたなとはあまり思わないです」
苦労しながらもプロの世界にたどり着き、ルーキーイヤーにブレイク。初招集の代表戦初スタメンで初ゴールを決め、オリンピックのメンバー候補に躍り出たシンデレラボーイ――。
そうした強運が、林にはある。