ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
まだ後遺症に悩まされる選手も…あの時、日本ハムに何が起こっていた? クラスター発生から活動再開までの一部始終【広報の備忘録】
posted2021/06/10 17:04
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph by
KYODO
1人、また1人とグラウンドから姿を消していった。
非常事態に陥ってから、早いもので約1カ月が経った。
北海道日本ハムファイターズに新型コロナウイルス感染拡大が直撃した。ゴールデンウイークのことである。記憶に新しいだけに、いまだ平時とは違う。他球団でも同様のケースが発生した。現場レベルでの緊迫は解けずにはいるが、プロ野球の球団としての日常は取り戻しつつある。
2021年シーズンを再スタートしているが、またいつ感染症に見舞われてもおかしくないのである。未曽有の局面と向き合った体験を踏まえて今回、備忘録として記す。
今思えば、いつもと違っていた
突然のことだった。
4月30日、札幌ドームでの埼玉西武ライオンズ戦。遠征を終えて戻ってくるチーム本隊へと合流した。前カードは、敵地での福岡ソフトバンクホークス戦。多くの選手らは前日の試合を終え、その足で福岡から北海道まで帰ることができていた。一部は、当日移動という1日だった。
私はその遠征には帯同しておらず、本拠地で待ち受けていた。午後6時開始のナイターに備えて正午前に球場入りすると、既に前日移動していた複数の選手の姿を、クラブハウスなどバックヤードで見つけた。
今思えばその時、いつもと違っていた。いつも笑顔を絶やさず、ハツラツと挨拶をしてくるA選手はマッサージチェアに体を預けていた。自身の用具があるロッカーとは別室にいた。声を掛けても反応が薄く、表情も暗かった。球場入りするとすぐにトレーニングウエアに着替えるのが選手のルーティンだが、私服のままだった。通路ですれ違ったB選手も同じような格好だったため違和感はあったが、その時点では気にも留めていなかった。
状況を把握するまでに、それほど時間はかからなかった。
A選手、B選手ら体調不良を訴えている選手が数人、発生したとの情報を共有されたのである。症状等から、新型コロナウイルス感染の疑いがある。その他選手、チームに携わるスタッフらも一斉に所定の検査を受検するように通達があった。有症状者は即時、球場から隔離された。検査結果を、待つことになったのである。