ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
まだ後遺症に悩まされる選手も…あの時、日本ハムに何が起こっていた? クラスター発生から活動再開までの一部始終【広報の備忘録】
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKYODO
posted2021/06/10 17:04
再開初戦となった楽天戦に勝利し、喜ぶ日ハムナイン
シーズンは再開されたが、舞台裏は日常とは遠かった。
陽性者、濃厚接触者が出た場合には柔軟に出場選手登録・抹消が可能な「特例2021」を適用してのチーム編成。ファームから大挙して、その要員が一軍へと合流していた。公式戦を行うことが最優先で、勝ち負けは二の次。
いつもは少し会話も聞こえてきていた食事を摂るサロンも、黙食が徹底されていた。全体が、試合前のテンションではなかったのである。
後日談で聞いたがその間、チームを離れていた陽性者、濃厚接触者はさらに厳しい環境に身を置いていたという。宿泊療養施設等は最低限の生活ができるスペース、設備のみ。ある選手は「ただ時間が過ぎるのを待っていただけ」と、アスリートとしての活動が完全にストップしたそうである。同じ施設の隣部屋で療養していた選手が咳き込むなど、苦しんでいる状況を壁越しにリアルタイムに把握できたスタッフもいたという。
孤独な闘いを、各自が強いられていた。
ルーキー今川は体重が7キロ減
陽性者と濃厚接触者の隔離、療養期間は、陰性者の活動停止期間よりも長期に及んだ。
陽性判定を受けたルーキー今川優馬選手は7キロ減など、体重が激減した選手も複数いた。また有症状だった選手の1人は、いまだ味覚と嗅覚に明らかな障害があるという。
「食べ物を口に入れても、何食べているか分からない。何を食べても味がほぼ一緒で、しょっぱいとか少しだけ感じるくらい。ビールを飲んでも、炭酸水を飲んでいるような感じ。香水のにおいとか、くさいとか、まだ何も感じない」
いまも後遺症と向き合いながら、再びグラウンドへと帰ってきたのである。