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セリエA全チームが採用! リアルタイム解析でサッカーの戦術に革新をもたらす「バーチャルコーチ」の真価 

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バレンティン・パウルッツィ

バレンティン・パウルッツィValentin Pauluzzi

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posted2021/06/10 17:00

セリエA全チームが採用! リアルタイム解析でサッカーの戦術に革新をもたらす「バーチャルコーチ」の真価<Number Web> photograph by L’Équipe

「バーチャルコーチ」に映し出される実際の画面。リアルタイムでピッチ上の出来事を網羅している

 最も顕著な変更を通知するシステムが考案されたことで、こうした数字のなかで道に迷うリスクが軽減された。最初の通告は、13分にミランに対して行われた。

「異常事態。試合開始以降で最終アクションにおける前線から最終ラインまでの距離が最も長くなっている」

 実際、このときミランはコンパクトな状態を保てなくなり、ディフェンダーは攻撃に加わらなくなっていた。

 その3分後、今度はアタランタに通告が届いた。

「ボールをポゼッションした際の時間が32秒から44秒に増加している」

 女神様(アタランタの愛称)の攻撃の時間が増えた、チームにとっての吉報だった。さらに21分には、再びアタランタに通告がなされた。

「レモ・フロイラーがゾーン2Cでパスを受けられる可能性が25%増加した」

 2Cとはピッチを網目状に分割したうちのエリアのひとつである。スタッフがこの情報を監督のジャンピエロ・ガスペリーニに伝えていたら、彼は選手たちにフロイラーをできるかぎり2Cでプレーさせるようにとの指示を出しただろう。

 試合開始から30分が過ぎ、今度はミランのプレーの偏向に関しての通告がアタランタに届いた。

「ここ数分間、ミランはサイドがより中央に寄った形でプレーしている」

 これも同様にガスペリーニは、選手たちによりワイドにプレーするようにと指示することができたはずだった。

戦術こそがセリエAの象徴となる

 スタンドではタブレットを抱えたスタッフがデータ解析に取り組んでいる。ときにアシスタントがベンチにもタブレットを持ち込んでいる。RAI(イタリア放送協会)との共同作業で、コッパイタリア決勝とスーペルコッパイタリア決勝では、いくつかのデータをテレビで公開した。より純化されたデータを、今後は熱心な視聴者に向けて公開する予定である。

 レガ・セリエAは、斬新なイメージを提供するバーチャルコーチが、イタリアサッカーの新たな象徴になることを望んでいる。さまざまな構造的な欠陥やインフラの不備を抱えるイタリアでは、戦術こそが常に最も革新的な要素であり、バーチャルコーチはまさにそれを具現しているのであるから……。

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