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セリエA全チームが採用! リアルタイム解析でサッカーの戦術に革新をもたらす「バーチャルコーチ」の真価
text by
バレンティン・パウルッツィValentin Pauluzzi
photograph byL’Équipe
posted2021/06/10 17:00
「バーチャルコーチ」に映し出される実際の画面。リアルタイムでピッチ上の出来事を網羅している
アプリは進化し、指の操作だけですべての情報を引き出せるようになった。リプレイ機能によりシーンの見直しが可能になり、メモ機能のおかげで記録ができる。ローマ対スペツィア戦では、ふたりのフランス人選手の比較をすることができた。ルシアン・アグメ(スペツィア)はボールをより保持したのに対し、ジョルダン・ベルトー(ローマ)はスプリント回数で上回った。これまでも監督は自身の目でそうしたことを見極めてきたが、今やそれに統計的な裏付けが加えられた。その点をバッコーニが説明する。
「去年のボローニャ対ジェノア戦でのことだった。センターフォワードのアンドレア・ピナモンティのパフォーマンスが前半に比べて落ちたという通告がジェノアになされた。情報を伝えられた監督のダビデ・ニコラは、このままだと交代だぞと選手に檄を飛ばした。最終的な決定権は監督の手にあり、彼らは自分の感覚に従ってどうするかを決める。その際に客観的なデータが、有益な情報を提供する」
データが示すサッカーの真の姿
サンシーロでおこなわれたミラン対アタランタ戦で得られたデータが、このアプリの素晴らしさを伝えている。
キックオフからすべてがアクティブになったポーン(選手の位置を示す目印)は、スクリーン上で4つの異なるビジョンを示しながら動き回った。それは選手の走った軌跡であり、速く走れば走るほどポーンの痕跡が長くなる。最も中心からずれた選手に焦点が当てられることで、チームをよりコンパクトな状態に保つことができる。またそれぞれの選手のプレスのかけ方も示されて、ポーンの周辺を縁取る円が大きいほどその選手の自由度も高くなる。最後に22人の選手の位置関係から、パスとシュートを実現させるための可能性が、さまざまな幾何学的な指標によって示される。
さらに画面はテレメトリーにも切り替わる。それは3つのカテゴリーのインジケーター(時間とスペース、アクション)に分けられており、その緻密さはテレメトリー活用の代表競技F1のエンジニアも認めるほど。選手が受けるプレッシャーやかけるプレッシャー、パスのリスク、パスを受ける難易度、アタッキングエリアでの危険度などを、1から100の段階に分けて記録する。もちろん既存の指標――ボールコントロールの平均時間やボール回しのスピードなども、データとして記録される。