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セリエA全チームが採用! リアルタイム解析でサッカーの戦術に革新をもたらす「バーチャルコーチ」の真価
text by
バレンティン・パウルッツィValentin Pauluzzi
photograph byL’Équipe
posted2021/06/10 17:00
「バーチャルコーチ」に映し出される実際の画面。リアルタイムでピッチ上の出来事を網羅している
「次の段階はふたつの融合だ。どんなテクニカルな動作をしたときにどれだけのプレッシングを受けるかを解析していく」
バッコーニが見据えるのは遥か彼方だが、彼と仲間たちはレガ・セリエAとその会長であるルイージ・デ・シエルボとの共同作業でここまでたどり着いた。後者が目指すのはイタリアクラブの競争力を高めることであり、その結果としてヨーロッパリーグで好成績をあげることである。3年契約が結ばれ、レガ・セリエAは民主主義の原則から所属する20のクラブすべてに無償で解析ソフトとタブレットを提供したのだ。
マス&スポーツ社は、スタッフ育成のため現場に深く入り込んでいった。フィードバックはポジティブなものばかりではなかった。バッコーニもそこはよく認識している。
「使い方を理解している監督や、メディアに活用の意義を説いている監督は、モダンでセクシーな監督といえる。だが、自分のやり方にこだわり満足している監督は、こう言って疑問を呈するだろう。『どうして人工知能は、その助けを借りずに試合に勝っているこの私にまで、サッカーはこうだと説明しようとするのか?』と。今後に向けてスタッフを増やす必要がある。そのうちのひとりは、最も進化した指標を活用できる統計データ解析の専門家だ」
場所を選ばないリアルタイムのデータ収集
すべての監督にとって有効とはいえないものの、アプリはタブレットによって誰でも利用できる。パストレッラはそのひとつをスクリーンに繋げて、500km離れたところでおこなわれたローマ対スペツィア戦を分析した。
「ピッチ上のプレーとのタイムラグは1秒もない。テレビの生中継よりもずっと速くデータが収集できる」と彼は語る。
選手の位置はポーン(点あるいは小さな円)によって2Dで示される。パストレッラがさらに続ける。
「バーチャルコーチの主な機能は4つある。第1は単純に高い位置から試合を見てチームの動きを追うことで、第2はバーチャルフィールド上でそれぞれのチームから3人を選んでコントロールし続けることができるインジケーターだ。そして第3がビデオ解析のモンタージュ作成を簡単におこなうための自動的な記録だ。さらに第4が特定のデータが揃った際の通告で、1試合平均でおよそ50回おこなっている」