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なぜネイマールは「メッシとロナウド級になれなかった」のか 本人取材を経験した記者が嘆く“2つの理由と周囲の環境” 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2021/06/09 12:32

なぜネイマールは「メッシとロナウド級になれなかった」のか 本人取材を経験した記者が嘆く“2つの理由と周囲の環境”<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

2011年クラブW杯の表彰式のひとコマ。それから10年、ネイマールはメッシを超えたとは言い難い

2人に追いつけなかったもう1つの大きな理由

 ネイマールがメッシ、クリスティアーノ・ロナウドに追いつけなかったもう1つの大きな理由は、度重なる故障である。

 2009年に17歳でデビューして以来、右足首を二度骨折し、背中、ハムストリング、内転筋などを度々故障している。13シーズンで13回故障し、718日休み、101試合欠場している。これに対してクリスティアーノ・ロナウドは実働20シーズンで、12回故障して244日休み、欠場したのは37試合。1シーズン当たりの故障回数、休んだ日数、欠場した試合数は、ネイマールの4分の1程度でしかない。小柄なメッシですら、これらの数値はネイマールの半分程度だ。

 あまりにも故障が多いので、重要な試合を欠場することが多い。

 ブラジル代表では、2014年ワールドカップ(W杯)の準々決勝コロンビア戦で負った背中の故障は相手選手のラフプレーによるものだから仕方がないが、2018年W杯では右足首の故障が完治しておらず、不本意なプレー内容に終始した。

 パリ・サンジェルマンでは2017~18年の欧州CLラウンド16のレアル・マドリー戦第2レグ、2018~19年の欧州CLラウンド16のマンチェスター・ユナイテッド戦2試合でプレーできなかった。とりわけ2018年以降、故障が激増しており、その理由として睡眠不足や不摂生を疑う専門家もいる。

父親は金銭欲が異常なまでに強かった

 私生活上の数々のトラブルも、彼の成長を妨げたはずだ。

 ブラジル国内では、「本人もさることながら、周囲の人間が悪い」という声が多い。その筆頭が、父親だろう。幼い頃から息子の思考を完全にコントロールし、キャリアを誘導してきた。その結果、傑出した偉大な選手に育て上げた、という大きな功績はあるのだが、その一方で、いつまでも保護の元に置こうとして人間的な成長を阻げてきたのではないか。

 かつて父親にインタビューしたのだが、口が達者で、大変な負けず嫌い。最も印象に残ったのが、「息子と2人で、六代先まで経済的に困らないほどの大金を手にしたい」という言葉だった。こんなことを言う人物は初めてだったので、面食らった。「なぜ六代先までなのか」と尋ねると、「だって、金は多ければ多いほどいいだろう?」と笑う。金銭欲が異常なまでに強い人物、という印象を抱いた。

【次ページ】 ネイマール親子に思い出すロナウジーニョ兄弟

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