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なぜネイマールは「メッシとロナウド級になれなかった」のか 本人取材を経験した記者が嘆く“2つの理由と周囲の環境”
posted2021/06/09 12:32
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Takuya Sugiyama
選手としてのネイマールの総合的な評価は、すでに概ね固まっていると考えていいだろう。2010年代から20年代前半にかけて、世界で最も優れた選手の1人だったのは間違いない。2017年に史上最高の移籍金でバルセロナからパリ・サンジェルマン(以下、PSG)へ移ったことがそれを証明している。そして、25歳のこの年、キャリアのピークに到達。その後は、緩やかな下降線を描いている。
持っていた才能は、申し分がなかった。人一倍、努力もした。順調に成長すれば、メッシ、クリスティアーノ・ロナウドと同レベルの選手になれていた可能性があった。しかし、そうはならなかった。なぜか。
いくつかの理由が思い浮かぶ。
バルサ→PSGの移籍は失敗だったと感じるワケ
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まず、バルセロナからPSGへ移籍したのは失敗だったのではないか。
バルセロナでメッシの引き立て役に甘んじるのを嫌ったようだが、メッシより4歳若い。かつてバルセロナのエースの座がロナウジーニョからメッシへ"禅譲"されたように、バルセロナでタイトルを取り続けながらチームへの貢献度を高めていけば、いずれメッシからエースの座を譲り受けることもできたはずだ。しかし、それを待てなかった(それと同時に、息子を移籍させることで代理人として巨額のコミッションを稼ぎたい父親が移籍を促したと思われる)。
とはいえ、今年5月、ネイマールがPSGとの契約を延長したのは正しい選択だっただろう。バルセロナへ復帰しても、一部のサポーターは彼が4年前に退団したときの怒りを忘れておらず、必ずしも居心地は良くなかったはずだ。また、もしレアル・マドリーへ移籍していたら、バルセロナのサポーターから「裏切り者」の大合唱が起きていたに違いない。
ただし、彼がPSGとの契約延長を決断したのは、新型コロナウイルスの感染拡大で欧州ビッグクラブの経営状態が悪化しており、現実問題としてPSGを満足させるオファーはどこからもなかった、というのが真相かもしれない。