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バルサから3点差逆転勝ち。あの夜、
ローマが起こした本当の奇跡とは。
posted2018/04/18 07:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
ローマが奇跡を起こした。
CL準々決勝で優勝候補の一角だったバルセロナを破り、34年ぶりのベスト4進出を決めた。1stレグで喫した4失点大敗をひっくり返す大逆転劇だった。
「(欧州での実績の乏しい)ローマにとって信じられない偉業だ」(主将デロッシ)
ローマが準決勝へ行くためには、本拠地オリンピコでの2ndレグでバルサ相手に1失点もせず3ゴールすることが条件だった。
世界中のブックメーカーがバルセロナ優位のオッズを立てたのも無理はない。
1年目ながら気鋭の指揮官ディフランチェスコは、決戦を前に大胆な戦術変更に踏み切った。敵地バルセロナで大敗した布陣から最終ラインを3バックに改め、若手FWシックを大黒柱ジェコと組ませる2トップへ。
対照的に1戦目とまったく同じメンバーで余裕たっぷりにキックオフへ臨んだバルセロナへ、ローマはキックオフ直後から獰猛に襲いかかった。
バルサ撃破で街は真夜中のパーティに。
開始6分で早くもFWジェコが先制点を奪うと、俄然チームに勢いが生まれた。押されるバルサは後半に入っても立て直すことができず、58分にはPKを献上。リーガ優勝も近いはずのカタルーニャの雄は追い詰められた。
82分にFWウンデルが放った右CKから、DFマノラスの技ありヘッドでついに3点目を挙げたローマは、アウェーゴールを奪おうとするバルサの猛攻を凌ぎ切った。
'03-'04年大会のデポルティーボや昨季大会でバルセロナ自身が見せた快挙に並ぶ、CL史上に残る大逆転劇。
試合終了の笛で、5万6000人が詰めかけたオリンピコとローマの街は興奮の絶頂に達した。
そこから始まる真夜中の“パーティ”を止められる者がいただろうか。
市内の目抜き通りはあっという間にロマニスタたちによって占拠され、クラブフラッグを振り回す車で溢れかえった。花火、爆竹、発煙筒も大放出だ。
年配者たちも鳴り響くクラクションに文句をつけるような野暮な真似はしない。騒ぎが一夜限りであることはわかっているし、かつて自分たちの青春時代もそうだった、とイタリアのお年寄りはこの手の喧騒にも寛容なことが多い。
お祭り騒ぎの中心となったポポロ広場を無理やり日本で喩えるなら、ワールドカップ開催時の渋谷界隈か道頓堀辺りだろうか。