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王者川崎に0-1の善戦も「勝ちに来たから悔しい」…若き鳥栖とミョンヒ監督、勇敢な“超攻撃”と巧みな配置転換の可能性
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/04/09 11:02
川崎戦後、樋口雄太は悔しさをにじませたという。見据える志が高いからこそ、今の鳥栖には大きな可能性を感じる
「勇敢に戦うのは当然で……悔しい気持ちでいっぱい」
「確かに高い位置で引っ掛けてフィニッシュまで行けるようなシーンはありました。でも、勇敢に戦うのは当然のことで、勝ちに来たのでそれだけをフォーカスされるのは……。負けて当たり前というのが世間の見解なんでしょうけど、僕らは本当に勝ちに来たので、悔しい気持ちでいっぱいです」
つまり、王者に対して勇敢に立ち向かい、追い詰めながらもアクシデントのために敗れた、などと美談にされても困るというわけだ。
彼我の差はピッチ内の選手たちが一番よく分かっていた。
右ウイングハーフとして先発し、ボランチに移ってからもよくボールに関与した樋口は試合の感想を求められると、「完敗のひと言です」とだけ答えたのだ。
たしかに、局面での技術や落ち着き、ゴール前での迫力をはじめ、三笘、家長昭博を途中投入できる選手層も含めて、川崎のほうが一枚上手だった。
だが、それでも個人的には“超攻撃”のぶつかり合いは、極上のエンターテインメントに映った。少なくとも退場者が出るまでは、鳥栖にも勝機が間違いなくあった。
金監督も望んでいるから、素晴らしいゲームだったとか、王者相手に良くやったとか、褒め称えることはしないが、試合内容はもちろん、「完敗」と認めるメンタリティに、この若いチームのさらなる可能性を感じずにはいられなかった。
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