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ダルビッシュ有「チームとして最高の1年に」 パドレスは同じ地区の“怪物”、王者ドジャースを倒せるか?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/03/04 17:05
開幕に向けてキャンプで練習をするダルビッシュ有投手
平均値はそれぞれ、先発5名が3.1対3。救援6名が0.6対0.7。その他(捕手・一塁・二塁・三塁・遊撃・左翼・中堅・右翼)も3.3対2.5と、そこまでの圧倒的な戦力差があるとは、読み取れない。
何よりここで大事なのは、数字よりも、かつてはドジャースに太刀打ちできなかったパドレスがこうして比較できる存在になったという事実だ。そして、ドジャースがもう10年近くも高い競争力を維持しているように、パドレスもまた、長期的視野に立っているという点が「肝(きも)」である。
ダルビッシュと左腕スネルというエース級投手2名を怒涛の連続トレードで獲得したパドレスの編成部門の最高責任者・A.J.プレラー・ジェネラル・マネージャー(GM)は、獲得会見の際にこう言っている。
「今年だけではなく、次の数年、かなり競争力があると感じている」
プレラーGMは元々、「編成部門のスター候補」とも言える立場でパドレスに招聘された人物だ。2014年にレンジャーズのGM補佐から「昇格」しての5年契約(後に3年の契約更新)を交し、昨季の成功で「候補」の名が取れたと言ってもいいだろう。この2月には「President of Baseball Operations(日本メディアの間では編成本部長と訳されている)」に昇格して4年の契約延長、2026年までの「長期政権」となることが発表されており、あとは究極の目標=ワールドシリーズ優勝を達成するのみである。
ダルビッシュも「チームにとって最高の1年になったら」
そして、プレラー編成本部長に残された目標がそう多くないと見るのなら、それはダルビッシュ有投手も同じではないかと思う。
サイ・ヤング賞の有力候補になり、日本人初の最多勝や野茂英雄氏に続く奪三振王にもなっており、個人としての名誉はすでに充分に受けただろう。残すは、究極の目標=ワールドシリーズ優勝を達成するのみ。移籍会見の席で今年の目標を問われた彼は、「とにかく家族みんな健康でいること」と言った後、とても控えめにこう言っている。
「チームにとって最高の1年になったらいいなと思う」
その「最高」が何を指すのかは“言わずもがな”である。