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イチロー「378安打」vs「128安打」だけど…楽天3年前“ドラ1”が中学時代から温めてきた「イチローの金言」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2021/02/28 11:04
春季キャンプで打撃練習をする楽天の辰己涼介(沖縄県金武町で)
「そこは挫折というか、悔しく思っているところなんで。常に『自分で言ったことは実行したい』って考えがあって。そこにちょっと、ポリシーじゃないですけど、かっこよさを感じてて。イチローさんがそうやし、サッカーで言ったら本田圭佑さんだったり。やっぱ、口に出せる人自体、少ないですし、それを実行できる人ってもっと少ないんで。だから僕も、ダメだからって諦めたりせず、撥ねのけて。今年は成長した姿を、いろんな人に見せたいなって思いますね」
壮大な目標設定は、ずっと変わっていない。
「抜かれへんやろ!」って思うんすけど(笑)
辰己には心で温め続けている、イチローの金言がある。
<僕を目標にしているようでは、僕は抜けません>
2009年に“イチローマニア”で知られる川崎宗則が「打倒イチロー」を宣言したことを知り、本人がそう切り返したという。
当時は中学生だった。この言葉を持ち出す辰己の声色が、豊かになった。
「『抜かれへんやろ!』って思うんすけど(笑)。結果を残しているから言えるんやな、かっこいいなって思いますね」
辰己は24歳でプロ通算128安打。一方でイチローは803安打。大卒と同じ年齢にあたる23歳からだと2年間で378安打を記録している。単純な比較ではあるが、辰己は現時点で、これだけの差をつけられている。
それでもなおイチローの名を挙げ、臆することなく向上心を打ち出すことが、辰己にとって何よりのモチベーションとなるのだ。
最後に今季の目標を訊く。
「打率3割」「200安打」など、わかりやすい数字を掲げるのかと、予測を立てる。
それらは、あっさりと外れた。
「とにかく出塁したいっすね。出塁率より数。できるだけ多く塁に出たいですね」
プロ野球では、出塁率4割が一流の指標と認識されている。しかし、辰己にそこへの言及はない。要するに「10割」を本気で目指し、シーズンに臨もうとしているのだ。
もとから無謀な挑戦だと、わかってはいる。だが、無理とは言わない。
突き抜けられる可能性。
辰己がそれを遮断することは、絶対にない。