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吉田輝星20歳が語る「投手の理想像」とは…田中将大への“熱視線”や大先輩の“全球直球”公開授業で学んだこと
posted2021/02/27 17:04
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Haruka Sato
「僕しか気づいていなかったと思うんですけどね。びっくりしました。ずっと真っすぐ投げてるんで。真っすぐだけで本当に行くんだ!って」
そう振り返ったのは、2月21日の中日との練習試合の1シーンだ。登板予定がなかった吉田は、ベンチの脇から試合を見学していた。見つめる先は、6回からマウンドに上がった先輩の宮西尚生。涼しい顔で直球を次々に投げ込み、伊藤、遠藤、石川昂を11球で三者凡退に打ち取った。それは、歴代最多358ホールドを誇る鉄腕による、無言の“公開授業”だった。
「バッターが全然タイミングがとれないんですよ。真っすぐしか投げてないのに空振りもとれていた。球速でいったら僕の方が速いのに、やっぱりそこには何かあるんだろうとずっと思っていたんですけど……こういうことか、って」
「お前の球だったら俺なら20勝くらいできるよ」
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きっかけは、2月7日の紅白戦で初の実戦登板を控えていた吉田に、宮西がかけた一言だ。
「ストレートだけで抑えてみ、って。お前の球だったら俺なら20勝くらいできるよ、と言われて……」
キャンプ中のこの時期なら、直球の球速は出ても140km台中盤。一体どうやって? と問い返した吉田に、14年目の左腕は説いた。
「力んで抑えるんじゃなくて、“間を操る”という話をしてもらいました。僕は、いち、に、さん、のリズムで投げすぎているからいい球がいっても全部当てられたり、ファウルにされてしまう。バッターにいかに自分のスイングをさせないか。ピッチングの『1』は、足を上げたところ、『2』は足がつくまでの時間なんですが、『1』と『3(リリース)』はほぼ変えられない。でも『2』が長ければお前の球は伸びるんだから自然に詰まらせることができると教えてもらいました。『2』のタイミングを操ることで、同じ球種でも倍の選択肢が生まれるんだな、って」