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イチロー「378安打」vs「128安打」だけど…楽天3年前“ドラ1”が中学時代から温めてきた「イチローの金言」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2021/02/28 11:04
春季キャンプで打撃練習をする楽天の辰己涼介(沖縄県金武町で)
立命館大時代、関西学生野球リーグ歴代2位の122安打を記録し、ドラフト1位(2018年)で楽天に入団した好打者。開幕早々に外野でスタメンを勝ち取った辰己は、自分の明るい未来を見据えるように、まるで宣言しているかのように抱負を述べていた。
「やっぱり、ヒット2000本は打ちたいなって。それでもイチローさんの半分以下なんで。あの方は異次元すぎますけど、自分も早くいい選手になるために、グラウンドではガツガツ、プレーしたいなって思います」
2年間で通算安打128本という現実
しかし前途洋々であるはずの若者、将来を嘱望されるドラフト1位の夢を打ち砕くかの如く、厳しい現実が突きつけられる。
辰己はルーキーイヤーから2年間、主力としてシーズンを過ごしながら、通算安打は128本と力を発揮できずにいる。1年目から「バッティングが課題」と一番に挙げ、克服に励みながらも数字は伸びない。辰己が漏らした言葉が耳に残る。
「精神的に落ち着かなかった」
今、あらためて問うてみる。
――課題克服に時間と労力を費やしているのに、結果が伴わないからか?
少しの沈黙ののち、辰己が短く答える。
「まあ、いろいろっすね。いろいろっす」
はぐらかすように、笑みを浮かべる。
「守備の人」への本音は…
本懐が道半ばであるにもかかわらず、辰己が主力として試合に出続けられているのは、走塁と守備の能力が高いからである。
50メートル5秒7の走力を活かし、盗塁数は2年連続で2桁をマーク。守備はそれ以上に周囲の度肝を抜く。
大飛球が後方を襲えば、外野フェンスへの激突を恐れず全力で背走する。外野の間を抜けそうな打球に対しても、勇猛果敢に飛び込む。ポジショニングや打球判断に優れていることもあるが、何より辰己の守備には思い切りのよさがある。そのファインプレーの数々は、パ・リーグTVのYouTube公式チャンネルでも度々取り上げられるほどだ。
それほどのフィールディングを見せつけられれば、誰もが当然のように称賛する。
「守備の人」と。