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イチロー「378安打」vs「128安打」だけど…楽天3年前“ドラ1”が中学時代から温めてきた「イチローの金言」
posted2021/02/28 11:04
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
「左手はそえるだけ」
マンガ『スラムダンク』の名言のひとつで、バスケットボールにおいて、右利きがジャンプシュートを放つ際の鉄則である。
2月16日の阪神との練習試合で楽天・辰己涼介が打った、逆方向のレフトスタンドへの先頭打者アーチならこうなるだろうか。
右手はそえるだけ。
対外試合がスタートした13日から、辰己は全試合に1番打者として出場し、14打数7安打、1本塁打。出塁率は5割8分8厘(成績は2月21日現在)。3年目のシーズンへ向け順調にアピールしている。
実現を後押しするのは打撃改革。辰己いわく「結構、全部変えた」そうである。
目視でも明確だ。まず、スイングが強くなった。そして、打撃フォームで明らかに変わったのが、右足の使い方だ。去年は状況に応じて上げたり、摺り足気味に動かしていたが、今年は右足でタイミングを取るかのように、するりと上げてからしっかり踏み込んでいるのである。
「特に構えとかは、変えてないっすね」
そっけなく答える。
「右手はもう、ないもんやと思ってますね」
辰己が変えたのは、「左側」だという。左打者の軸足である左足のポイントをしっかりと作り、ブレないように固定する。構えてから始動し、スイングに移行する際には、大振りしないよう回旋運動を極力控え、左腕で押し込むようにバットを振り切る。
さらにわかりやすく、辰己が言語化する。
「まあ、軸足と左手の操作性を高めるというか。そういう練習はしてきたんで。だから、右足はそのアシストをしている感じで、右手はもう、ないもんやと思ってますね」
左側という大きな一点を変えたことで、打撃フォーム全体が変わったわけだ。
「右手はそえるだけ」とは、つまりその証左でもある。先の阪神戦でのパフォーマンスは、辰己自身「今、やりたい打撃ができました」とコメントを残すほど、手応え十分だった。
3年前ドラ1「それでもイチローさんの半分以下なんで…」
辰己が現在地を語る。
「2年間、バッティングが全くよくなってなくて。今、だいぶ勉強して、やっとちょっとよくなった感じがしますね」