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「ラーメン屋のほうが儲かったかも」“ヴェルディ川崎の天才”石塚啓次46歳、スペイン移住の厳しさを語る 

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栗原正夫

栗原正夫Masao Kurihara

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photograph byDaisuke Nakashima

posted2021/02/20 17:04

「ラーメン屋のほうが儲かったかも」“ヴェルディ川崎の天才”石塚啓次46歳、スペイン移住の厳しさを語る<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

2012年からスペインに移住した、元ヴェルディの石塚啓次46歳

「最初は白紙だったんで何でもよかったし、とくにうどんに深い愛情もなかった。でもラーメン屋はほかにもあったから。どうせやるなら誰もやってない方がいいし、チャンスがあるかなって。製麺機は日本から取り寄せて、始める前にはメーカーの“うどん学校”に1週間ほど通って基本的なことはすべて学ばせてもらった。ただ、いま考えたらラーメン屋をやってた方が儲かったかなって。バルセロナでは5年くらい前からラーメン戦争が起きていて、コロナ前は1カ月に1店舗くらいできても潰れてる店は1つもなかったしね。外国人が作ったどんなマズいラーメンでもやっていけてるくらいやから、その波に乗っておけばよかった(笑)」

9年経つが「スペイン語はほぼ話せない」

 スペインに移住し約9年が経つが、現地の生活にはいまだ慣れないし、スペイン語もさっぱりダメだと笑う。

「長く住んでるから話せるやろ、と言われるけど、ほぼ話せない。まったく勉強もしていないし、困ることだらけ。生活するにしても日本とは違って、電気が止まってもなかなか復旧しないし、去年末も店のシンクが壊れて大変やった。そんなとき話せないでどうするか? それくらいは『食洗器、壊れた、水いっぱい、助けて!』っていえば多少文法が間違ってても何とかなるでしょ(笑)」

 コロナになる前は、朝に子どもを学校に送り出すと、そのまま買い出しに向かい、仕事を終えて帰宅する頃には24時を回ることも珍しくない忙しない日々を過ごしていた。そんななか、たまの楽しみは店を閉めたあと、焼酎を片手にネットで動画を楽しむことだったりした。

「この1年くらいは、楽しみなんて何もない。動画はバラエティも見るし、ニュースも見る。お笑いは好きなんでよく見るけど。好きなタレント? 恥ずかしくてよう言わん(笑)。こっちでも『BUENA VISTA』というブランドを作ってアパレルの仕事も続けているし、イメージ的に言わんでおいた方がいいでしょ」

 いま願うのは、少しでも早いコロナの終息だが、考えたところでどうにもできない問題でもある。

「こればかりは自分ではどうしようもないからね。国が店を閉めろと言ったら、閉めるしかないし。この1年ぐらい、いろんなことを考えても何にもうまくいかなかったし、この先どうしようかって考えるのも無駄なんで、もう考えてもないけど。しばらくこんな状態かもしれへんし、待つことしかできひんから」

 それでも、人生は続く。今後、やりたいことなどはないのだろうか。

「とくにないけど、早く楽したい。たくさん儲けて、誰かに仕事も任せて、海でプカプカ浮いていたい。それ以外はないよ(笑)」

(【続きを読む】「ははは、分かんない…ボクを出したら優勝できるんで」“ヴェルディの異端児”石塚啓次、27年前・伝説のインタビューを振り返る へ)

#2に続く
「ははは、分かんない…ボクを出したら優勝できるんで」“ヴェルディの異端児”石塚啓次46歳、27年前・伝説のインタビューを振り返る

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