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巨人ビエイラ、漫画みたいなブラジル時代秘話 “貧困”も片道6時間かけて練習参加、5カ月で球速17kmアップ
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byNanae Suzuki
posted2021/01/17 06:02
粗削りながら巨人での今後が期待される剛腕ビエイラ。ブラジル時代から想像以上の努力家だった
この頃には、直球のスピードが150kmに達していた。わずか5カ月で、球速が17km増したのだ。「こんな選手は見たことがない」とカウデイラ・コーチは驚嘆した。
2013年WBCにもクローザーとして
マリナーズと契約後、最初の2年間はベネズエラ・サマーリーグ(ルーキーリーグ相当)で修行を積んだ。
2012年11月、ブラジル代表に選ばれて2013年WBCの中南米予選に出場。クローザーとして2試合に登板して2セーブを記録し、予選突破に貢献した。
2013年3月に福岡で行なわれたWBC第1ラウンドにも出場。キューバ戦は1イニングを無失点に抑えたが、中国戦で2失点。チームは強豪相手に奮闘したが、結果的に3戦全敗で敗退した。
2013年から2017年までは、引き続きマイナーリーグでプレー。2016年には現在に至るまでの自己最高の167kmを記録している。
そして2017年8月、メジャーに昇格し、ボルチモア・オリオールズ戦でデビューした。11月にはホワイトソックスへ移籍。2018年8月24日、デトロイト・タイガース戦で初勝利をあげた。2019年までのMLB3年間の成績は、2勝1敗1セーブ1ホールドだった。
恩師も「いずれは巨人のクローザーを」
ビエイラは2019年末に巨人に入団すると、2020年には27試合登板0勝1敗2ホールドの成績を残した。主な役割は中継ぎだったが、10月30日のヤクルト戦の延長10回に登板すると、4番村上宗隆を163kmの直球で見逃し三振に仕留めて引き分け、リーグ優勝を達成。全身で派手なガッツポーズをして喜んだ。
レギュラーシーズンで163km、日本シリーズで164kmを二度出しており、いずれ2016年に大谷翔平(当時日本ハム)が記録した国内最速165kmを超えるかもしれない。
かつてブラジルの強豪チームで剛腕投手として鳴らし、2000年の設立以来、ヤクルト野球アカデミーの校長を務める佐藤允禧は「まだまだ発展途上だが、伸びしろがたっぷりある」、「自分で目的を持って練習に取り組めるのが長所」として、「今年が非常に大事になる。いずれは巨人のクローザーを務めてほしい」と期待する。