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高校サッカー“ロングスロー論争”は英国でも賛否 「一か八か」「目の前の結果ではなく…」デラップ砲は根強い人気
posted2021/01/10 17:03
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph by
Getty Images,Naoki Morita/AFLO SPORT
約10年前に活躍した、ある選手の動画がイングランドで最近話題になった。
スポットライトを浴びたのは、ロングスローの名手として知られたロリー・デラップ。超高速スローからの攻撃でゴールネットを揺らす得点シーンを集めた動画は、英衛星放送スカイスポーツが昨年4月に動画サイトで公開すると、約58万回のPVを記録した。いまだに再生数が伸びているように、「デラップ砲」の人気はまったく衰えていないようだ。
デラップは肩を壊してサッカーに専念
英サッカーサイトで「ロングスローの名手トップ5」といった特集記事が掲載されると、毎回ライバルを大きく引き離して堂々の1位に輝くのが、このデラップである。青年時代にやり投げの選手として学生チャンピオンになり、肩を壊したことでサッカーに専念するようになったという異色の経歴の持ち主である。
ロングスローは高速で、飛距離にして約40メートル、しかもゴール前に近づくにつれスピードが増していくという、まさに異次元の飛び道具だった。MFとしてのピッチ内でのプレーより、サイドラインからのロングスローばかりが話題になったほどだ。
このデラップのロングスローを重宝していたのが、ストークのトニー・ピューリス監督だ。戦術は、いわゆるイングランド伝統のキック&ラッシュである。ロングボールを多用し、前線には長身&巨漢の2トップを配置する。そして、敵陣でスローインのチャンスを掴むと、デラップが颯爽と登場。長身選手めがけて、鋭いロングスローを送り込んだ。
13ゴール中7ゴールがデラップ砲!
特に、ストークのプレミア昇格1年目だった2008-09シーズンは猛威を振るった。チームが開幕から記録した13ゴールのうち、実に7ゴールがデラップのロングスローから生まれた。このシーズンでチェルシーに敗れた際、ピューリス監督が「デラップの欠場」を敗因に挙げていたほど、ストークの中で大きな役割を果たした。
実際、ホームゲームでボールがタッチラインを割ると、決まってボールボーイがデラップの下に駆け寄り、「手が滑らないように」と乾いたタオルを素早く手渡していた。おそらくピューリス監督の指示が出ており、戦術の柱だったことがうかがえる。