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ヤンキース黒田博樹に憧れて…菅野智之がメジャー断念、巨人残留の“お金ではない”本当の理由とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2021/01/09 18:00
ポスティングでのメジャー移籍を目指した菅野だったが、結局、巨人残留が決まった。その心中やいかに
獲得から脱落した球団から様々な情報が流出する
もちろん菅野に対する評価はメジャーでも高かった。2017年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での好投や、昨シーズンの開幕13連勝などの活躍などから、メジャーでの評価は「ローテーションの3番手くらいを担える先発投手」というものだった。
そこで先発投手の補強を狙うニューヨーク・メッツやトロント・ブルージェイズ、サンフランシスコ・ジャイアンツ、ボストン・レッドソックスなどが次々と名乗りを上げ、最後には今季、積極的な補強を行なうサンディエゴ・パドレスも乗り出すなど獲得に動いた球団は多かった。
しかしそれでも最終的には合意に至る条件を提示できる球団はなかったということだ。
交渉過程では現地メディアを通じて様々な情報が流れてきた。
メジャーの移籍交渉では獲得から脱落した球団から様々な情報が流出するのはよくあること。日本人選手のメジャー移籍でもかつて楽天からニューヨーク・ヤンキースに移籍した田中将大投手のときや日本ハムからロサンゼルス・エンゼルスに入った大谷翔平投手の移籍の際にも現地発の移籍情報に日本のメディアが右往左往した光景も記憶に新しい。
“最大のライバル”が、日本の古巣・巨人だった
ただ菅野の交渉で特別だったのは、メジャー球団の“最大のライバル”が、日本の古巣・巨人だったということかもしれない。
交渉の最中には米メディアが一斉に、巨人が4年契約で毎年、菅野に契約の見直しができるオプトアウト条項を含んだ高額オファーを出していることを報道。また菅野が2019年にシアトル・マリナーズと契約した菊池雄星投手の4年総額5600万ドル(約58億2000万円)と同程度の契約を望んでいるという情報も流れる事態となった。
チーム事情からすれば菅野は喉から手が出るほど欲しいが、コロナ禍の厳しい予算編成を強いられている球団が、次々と脱落していった形だ。現地で取材する記者に聞くと、当然のように地元メディアやファンからは批判が舞い上がることへの“エクスキューズ”として、こうした情報が意図的に流された可能性も否定できないという。