プロ野球亭日乗BACK NUMBER

ヤンキース黒田博樹に憧れて…菅野智之がメジャー断念、巨人残留の“お金ではない”本当の理由とは 

text by

鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

PROFILE

photograph byNaoya Sanuki

posted2021/01/09 18:00

ヤンキース黒田博樹に憧れて…菅野智之がメジャー断念、巨人残留の“お金ではない”本当の理由とは<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

ポスティングでのメジャー移籍を目指した菅野だったが、結局、巨人残留が決まった。その心中やいかに

あえて新天地に身を投じることが得策なのか

 そしてそういう情報が氾濫することで、どうしても条件面の攻防ばかりに目が行きがちになる。しかし残留の決め手は、菅野にとってメジャーで活躍できる環境の保証が十分になされなかったことだったと思う。

 実は今回のポスティング申請の時点から、菅野の周辺ではこのオフの移籍がベストなのかを指摘する声は少なからずあった。

 コロナ禍の中で日本以上にメジャーの2021年シーズンの先行きは不透明だ。すでにMLB(大リーグ機構)からは、自主トレでのキャンプ施設の開放に制限がかかり、選手のキャンプ地への移動の禁止令も出されている。通常通りにキャンプとオープン戦が実施できる可能性は限りなくゼロに近く、果たして本当にシーズンが予定通りに開幕するのかどうかも疑問なところだ。

 そこであえて新天地に身を投じることが得策なのか、という指摘だった。

今年で32歳となる菅野にとっては1年、1年が勝負

 もちろん今年で32歳となる菅野にとっては1年、1年が勝負である。だからこそあえてこの状況でも自分の夢に向かってメジャー移籍を模索した。

 ただその一方で、行くからにはメジャーでも勝てる投手を目指し、そのためには環境が変わる1年目の事前準備は何より大事になものとなる。しかしキャンプやオープン戦のスケジュールも見えないままでは、その準備がまともにできないのではないかという思いがあって当然だった。

 不幸だったのはコロナ禍の影響で、相手球団と対面してじっくり話し合う機会が限られていたことかもしれない。もしもっとじっくりと交渉を積み重ねられる機会があれば、事態は変わったかもしれない。ただ、条件面の交渉が主となり、その中で菅野の逡巡を突き動かすだけの提示はなかった。

 そこが巨人残留の核心だったのだろう。

【次ページ】 黒田の姿に憧れ「いつか自分も」

BACK 1 2 3 4 NEXT
読売ジャイアンツ
菅野智之

プロ野球の前後の記事

ページトップ