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【FC東京ルヴァン制覇】1年前の敗因「選手層と勝負弱さ」払拭 アンカー森重真人の“利きぶり”が象徴的なワケ
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJIJI PRESS
posted2021/01/05 17:02
江坂任やオルンガら柏の強烈な個の力を、アンカーとして分断した森重真人。年越しでタイトルを得たFC東京を支える働きだった
「優勝できてホッとしている」
試合後、この1年ですっかり頼もしくなり、この日もオルンガを封じた渡辺剛と、森重のふたりが、奇しくも同じ感想を口にした。
「優勝できてホッとしている」
この言葉は、タイトル獲得を義務付けられながら果たせずにいるプレッシャーが、いかに大きかったかを表していた。
タイトル獲得の切り札として10年に迎えられながら、J2降格を経験した森重は翌シーズン、天皇杯制覇を成し遂げたものの、それ以降ずっと苦しんできた。引き分けに終わって4位となった15年シーズンの最終節では、ファン・サポーターの前で涙をぬぐった。
目の前で優勝の瞬間を見せつけられた19年シーズンの最終節後には「例年以上の結果を残せたけど、宿題も生まれた。それがモチベーションになる」とリベンジを誓った。
だから、この日の会見で発した「ほんと、長かった」という言葉には、これ以上ない実感と重みが詰まっていた。
下部組織出身、渡辺剛にたぎる青赤の血
プロ2年目の渡辺は、FC東京U-15深川出身で、“青赤の血”が流れる選手だ。
「自分が東京にタイトルをもたらす」
そう誓って19年シーズンに中央大からFC東京に加入し、夏にレギュラーポジションを獲得した。最終節では相手にドリブルでかわされ、ダメ押しゴールを許したが、20年シーズンが開幕したばかりの頃、「あの瞬間を脳裏に刻みつけて、やっていく」と力強く語っていた。
キャプテンの東が離脱した際にはキャプテンマークを巻いたものの、リーグ戦やACLで結果を残せず、苦しんできた。だが、その苦しさ、悔しさが、この優勝で報われたに違いない。