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【父の教え】中村憲剛の心に3つの家訓「感謝・感激・感動」 天皇杯優勝で引退、漫画超えのエンディング
posted2021/01/05 11:04
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
YUTAKA/AFLO SPORT
2021年1月1日。
東京・国立競技場で迎えた現役最後の試合に中村憲剛がタッチラインをまたぐことは叶わなかった。しかしベンチ脇でウォーミングアップを続けながら、天皇杯初制覇を告げるタイムアップの瞬間を見届けた表情は、喜びに満たされていた。
「感無量です。うれしすぎます。おそらく今、世界で一番幸せなサッカー選手なんじゃないかなと思います」
表彰台でキャプテン・谷口彰悟から手渡された天皇杯を高々と掲げると、次の瞬間、黄金のテープが一斉に舞い上がる。18年にわたった現役生活は、最高の景色を目に焼き付けながらその幕を閉じることができた。
「18年間の最後に、中村史上最高の1年間をみんなのおかげで送れたことが、本当にうれしく思います」
後悔などあろうはずもない。試合後は清々しい表情で、そう胸を張っていた。あまりに出来すぎた物語の完結に、まるで1つの奇跡を見ていたのではないかと記者席から思ったほどだ。
今の世の中、奇跡という言葉は溢れている。
ライターとして乱用するのもはばかられるが、それでもやはり「奇跡」と書き記したいと思った。
中村憲剛が川崎フロンターレで紡いできた物語は、やはり奇跡だったのだ、と。
ことあるごとに伝えた「感謝」
「感謝しかありません」
現役引退を発表してからこの2カ月間、取材の場に登場した中村憲剛は、ことあるごとにこの言葉を口にし続けていた。サポーターやチームメート、スタッフ、家族……そして、時にはメディアにも、だ。
例えば12月21日の中村憲剛引退セレモニーでのこと。